帝王の庭*
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「…跡部さん。あたしが嫌だと言ったのは、このヒモを首から下げるのが、嫌なわけで…別にカードはどうでもよかったんですけど」
「通行証だと言ったろ?文章は誰が見ても冗談だとわかるだろうから、気にするな」
跡部さんは、チェス盤を見ながら、考える風に言った。
「…冗談でしますか」
「冗談だからやるんだ」
跡部さんは黒のポーンを手に取ると、ニヤリと笑い
「今から俺は、お前の携帯を隠してくる。その前にポーンを置いて行くから、俺が戻るまでに次の一手を考えておけ」
そう言うと、ポーンを
『e4』の位置に置いて、生徒会室から出て行った。
あたしもチェス盤を見て、白のポーンを手に取り
『e5』に置いた。
カードのマス目は全部で30ある。
と言うことは、途中のロスタイムやペナルティを考慮して…遅くとも22~23手で打ち終わらないと、カードがいっぱいになってしまう…。
あたしは必死に考えた。跡部さんの次の手を─
見た瞬間、速攻で打ち返せるように、何十手でも先を読まなければ─
それに携帯…跡部さんなら多分、普通の教室には隠さないと思う。
普通の教室は、クラスと学年が違うだけで、中は同じだから…跡部さんの『美学』に合わないと思う。
かと言って、理科室や家庭科室は…違うよね。イメージじゃない。
ほどなくして跡部さんは、戻って来た。
遠くなのか近くなのか…推し量れない微妙な時間…20分をかけて。
「ふん、まぁ妥当な読みだな」
跡部さんは、あたしが置いたポーンを見ると、満足気にうなずいた。
「…ところで、お前は時計を持っているのか?」
「…あ…」
あたしは、普段から腕時計はしていない。
「しょうがねぇなぁ…」
跡部さんは、そう言うと自分の腕時計を外して、あたしに渡した。
(…… 跡部さん?…中学生がロレックスなんて高級腕時計をしててもいいんでしょーか…)
あたしは文字盤のクラウンのマークにのけぞった。
そして、初めて触るロレックスに緊張しながらも、どうにか自分の手首につけた。
「随分ゆるいな」
跡部さんは笑うと、あたしの手首に合わせて時計のベルトを調節してくれた。
「あ…ありがとうございます。あ、でもこれがないと跡部さんが…」
困る…と続ける前に、跡部さんは右手の親指で生徒会室の壁にかかっている時計を差し、机の引き出しを引くと、ストップウォッチを取り出した。
「さぁ準備はいいぜ。お嬢ちゃん」