何も言えなくて…人魚姫の恋
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「だから、そんなんじゃねぇって」
雲間が徐々に切れて来て、辺りが明るくなる。
「でも、伝えたい相手に伝えることが、どうしても出来なくても構わない…ってことでしょ?」
藤田がまたノートに目を落とすと、ペンを走らせた。
「…そうだな、伝わらないもどかしさを実感するのも必要じゃねぇの? 何もかもツーカーに行くわけねぇし、行ったらつまらねぇ…」
少しだけ陽射しが現れると、屋上の床が水たまりを反射してキラキラ光る。
金と銀の折り紙も光った。2枚一緒に拾う。
「ふうぅん…。何か興味湧くね、海堂くんて」
2枚の折り紙を広げながら、藤田が海堂に笑いかけた。
「あ…? 何も出ねぇぞ」
関心なぞ持つな…と言いたげに、しかめっ面で海堂が横を向く。
「あ、天使のはしご…」
藤田が雲間から幾筋かの光が差しているのを指差す。
「…へぇ…そんな名前があんのか」
海堂も振り返ると目を細めるようにして、光のカーテンを見た。
「多分ね、泡になった人魚姫はこんな空に昇って消えたと思うな」
ノートを腕に抱えた藤田の声も、透き通るように空に溶け込んだと思う。