何も言えなくて…人魚姫の恋
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「…風邪ひくぞ…?」
海堂は、ごく当たり前の言葉をかけるしか出来なかった。
「あら、平気よ。結構頑丈に出来てんだから」
振り返る藤田は、さっきまで教室で見せていたつまらなそうな顔とまるで違い、晴々としている。
雨なのに、晴々。
きっとこいつの目には、虹が見えているに違いない。
「海堂くん?」
「これ、一枚ずつ拾えばいいのか?」
海堂は小雨の中、藤田に倣(なら)い、冷たく濡れている屋上へと一歩踏み出した。
「へぇ…仕事は忘れてなかったんだ」
「まぁな…」
皮肉っぽい、藤田の言い方にも、別に何も感じなかった。
「そら、一枚目だ」
海堂は手近に落ちていた水色の折り紙を拾うと、折り紙についている雨粒を振り払ってから、藤田に渡した。
「ありがと…」
小さく呟くと、藤田は折り紙を開いた。
「海堂くん、よかったわね。王子様が決まったわよ」
ニコニコと愉快そうな顔を海堂に向けてから、手に持っているノートに配役の書き込みしかけたものの、雨が開いたページをポツポツと濡らすため仕方なく出入り口のドアまで戻って行った。