何も言えなくて…人魚姫の恋
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「そうね、でも演目は人魚姫だし雨なんか関係ないわ」
お構いなしに藤田は階段を登る。
(いや、俺は、フツーに人間だし、 雨に当たりゃ不快だぜ?)
そうは思うが、藤田は階段を登り切り、屋上出入り口の扉をさっさと開けてしまった。
「おい待てよ!」
藤田が出て、閉まりかけたドアに向かい海堂は声をかけながら、2段跳びで駆け上がり閉まる寸前のドアノブを掴んだ。
「花びら…?」
海堂がドアを開けて見たものは、小雨がそぼ降る中、色とりどりの折り紙が空から降って来るところだった。
「…藤田…?」
折り紙は雨粒と共に屋上の冷めた床に落ち、萎(しお)れたように水たまりに、じんわりとその色を滲み出していくように見えた。
「何かね、ムシャクシャするし、適当にバラまいて適当に拾って、適当に決めようと思ったのよ」
雨はそれほどひどくは降っていない。
しかし藤田の髪や肩を濡らすには充分だ。