帝王の庭*
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両方見ていたのか…。
リョーマは、それだけで穏やかになれた─
「惜しいな…テニス、やらせてみたかったな」
乾が画面の七星を見てつぶやいた。
「─ああ…そうだね。おそらく陸上じゃなくてもトップレベルのプレイヤーになれる…」
大石もそっと言った。
「…うん」
菊丸はただうなずいた。
皆、七星が走れないことを知っている…。
夢を断たれたことを知っている…。
それでもあふれる七星の天性の力…。
薄暮れようとしていく部室内に、ただ沈黙し画面を見続ける部員達の影が延びる。
─携帯がない─
あたしはかなり狼狽しながら、日曜日の氷帝学園にやって来た。
落とすとしたら、この氷帝の塀しかないんだけど…影も形もない。
(困ったな…どうしよう…)
途方にくれて、氷帝の正門前で立ち尽くしていると
「探しているのはこれか?」
「え?」
振り向いたあたしの目に、携帯についているストラップを持ち、プラプラさせてニヤ…と笑う跡部さんが映った。
「あっ!それです!よかった!跡部さんが拾って下さったんですか?ありがとうございます」
あたしは、昨日のこともあるので深々とお辞儀をした。
跡部さんが携帯を差し出したので、受け取ろうとしたら…
「………」
あたしの顔を見て跡部さんは、
「ちょっと来い」
そう言うと、あたしの携帯を自分の上着のポケットにしまった。
(えっ!)
ちょ、ちょっと跡部さん?あたしの携帯返してくれないんですか?
「跡部さん?あの…」
「黙ってついて来い」
そう言うと、スタスタ先を歩いて行くので仕方なく跡部さんの後を追った。
日曜日の校舎は、生徒もいなくてしんとしている。昨日は体育祭だったから、運動部も休みらしく、校庭も静かだ。
でも跡部さんは制服を着ている。何か用事で登校したのだろうか…?
「そら入れ」
ある部屋のドアを開けると、あたしに振り向いて言った。
「…ここは?」
あたしは室内を見回した。本棚、書類棚、机に椅子、パソコン…。ちょっとした事務所みたいな感じだ。
跡部さんは、きちんと整頓された奥まった机に向かうと言った。
「生徒会室だ」
「…もしかして、跡部さんは生徒会長さんなんですか?」
「まぁな」
珍しくもない…という顔つきで跡部さんは返事をした。
「テニス部の部長さんて、生徒会長をしたいものなんですか?」