夏の幻*
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『放課後もう一度来てくれ』
激しくなった雨音にかき消されないようにか、手塚先輩はあたしの耳元でその言葉を伝えた。
お陰で、5~6時間目は放課後のことが気になって、授業があまり頭に入らなかった。
それでも放課後はあっさりとやって来て─いつもなら長くて早く終わって欲しい授業が、こんな時だけ驚異的なスピードで進むのはなぜだろう。
部室のドアの前で、意味もなく深呼吸。
(昼休みに言ったこと以上のものなんて…何もないのにな…)
そう思いながらも、ドアをノックしかけて、ふと気づいた。部室の窓の中、薄暗い。
『何だ…先輩まだ来てないんだ』
ホッとして、でも遠慮がちにドアを開けると…やっぱり人の気配はない。
雨降りのせいで、いつもの時間より遥かに夕暮れの色濃い時間帯の薄暗さだ。
(電灯のスイッチ…)
ドア付近を探してスイッチを押すと、パッと眩しいくらいに明るくなった。
誰もいない部室は、ガランとしてひどく無機質に思える。
手近な椅子に腰かけて手塚先輩を待つことにした。
(…遅いな)
さっきまで小降りになっていた雨音が、またひどくなってきた。