帝王の庭*
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「一番はこの俺様だ!」
そう言うとあたしをガッと抱き上げた。
「─ったく強情なお嬢ちゃんだぜ。おい樺地」
「ウス」
「運転手に、先に医者に寄るよう言ってくれ」
「ウス」
樺地さんの足音が遠ざかる。
「しかし、とんでもないことしたな…氷帝の歴史に残るぜ、お嬢ちゃん」
跡部さんが笑いながら言った。
(…取りあえず…送って貰えそうね…はは…ごめんなさい…跡部さん…あたしの携帯…立海大と青学…しか入ってません…ちょっと跡部さんのプライド…くすぐりました…)
あたしの意識はそこで切れた───
青学テニス部のテニスコートは再びざわついた。
跡部はわかるが…抱き上げられている小柄な…少年…? 着てるのは氷帝のテニス部のユニフォームにジャージ…。
なぜ青学に…?
今日は部長の手塚がいない。副部長の大石があわてて対応に出た。
「あの…跡部…」
「七星!!」
「七星ちゃん!?」
越前リョーマと不二周助が同時に気づいた。
「ええ!?七星ちゃんなの?」
菊丸英二も驚いて叫ぶ。
「…ふん。今日は手塚は休みか…。じゃ、このお嬢ちゃんは誰に手渡せばいいんだ?」
跡部が、集まった青学メンバーをぐるりと見回し、部長手塚の顔が見えないため皮肉っぽく言うと
「僕が」
不二がサッと跡部の前に立った。
「ほぅ…。不二なのか」
ちょっと意外そうな顔をしたが
「そら、前回と同じだ。ただ今日は足首捻ってるから、気をつけてやれよ」
言いながら、跡部は不二に七星の体を預けた。
「捻挫を?また一体何を…」
したのか…と問う前に、
「星を取ったのさ。氷帝の…誰も取れないはずの星をな」
跡部が先に答え、不二に抱き上げられている七星の胸に『帝王の星』をそっと置いた。
「それからこれもな」
一枚のDVDを出した。
「今日のお嬢ちゃんの記録だ。目を見張るぜ?点滴してる間に焼き付けしたんだ。ま、褒めてやれ。じゃな」
「七星ちゃんの記録…?」
DVDを受け取った菊丸はコートから立ち去って行く跡部の背中を見送りながらつぶやいた。
「とにかく僕は、七星ちゃんを、保健室に連れて行って休ませるから」
「ああ、わかった」
ざわついたテニスコートを納めるため大石は
「解散」
と、部員に伝えた。
あの時の手塚のように不二も思った。
ただ想いの内容は、少し違っていた。
このまま時が止まればいい──