125キロの加速 ナツのオトメ1*
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…取り合えず…今日は失礼します」
人目を気にしたのか…幸村さんの迫力勝ちか…とにかく日吉さんは退いてくれた。
あたしは幸村さんの背中の後ろで、肩から大きく息を吐いた。
「でも七星さん、俺はあきらめないから」
それをあたしに言い残すと、ようやく日吉さんは歩いて行った。
「…君は本当に人を魅了するな」
肩越しにあたしに言うと、幸村さんは、背中に回していた手をゆるめてくれた。
「す…すみません、またご迷惑おかけして…!」
あたしは、幸村さんの前に回ると、あわてて深々とお辞儀をした。
「いいんだ。君を守れるなんて、嬉しい限りだから」
幸村さんは 優しく微笑んでくれた。
(優しいなぁ…幸村さんは…。だからかな、つい何か困ると頼ってしまう…。ダメだな…。もっと強くならないと…)
幸村さんの笑顔を見上げながら、自分がちょっと情けなく思えた。
「あ…そうだ、俺は明日退院するよ。さっき先生に言われたんだ」
嬉しそうに、あたしに言ってくれた。
「わ…よかったですね。あ、でも無理はいけませんよ?」
暑さに弱い…と真田さんから聞いていたから、少し心配になって言った。
「大丈夫だよ、ありがとう」
また微笑んでくれた。
「そうだ…いけない。あたし明日から天文同好会で合宿に行くんです!」
あやうく伝えるのを忘れるところだった。
「合宿…天文なら山だね、どこへ行くの?」
幸村さんがあたしをじっと見て言った。
「あ…八ヶ岳です。2泊3日で…」
見つめられると恥ずかしくなって、あたしは少しもじもじした。
「八ヶ岳か…いい所だからゆっくりしてくるといいよ」
幸村さんが、何だかさっきより嬉しそうに見えるのは…気のせい…?
(それに… いつもの幸村さんなら…あたしに逢えなくなるから…って寂しがったり、残念がったりするのに…)
…と漠然と考えたけど…これじゃ自惚れだよね。ひゃ~、いつの間にかあたしったら、そんな考え持つように~。
(いけない、いけない)
「それじゃ失礼します。ありがとうございました」
気を取り直してあたしはもう一度幸村さんにお辞儀をして、病院を後にした。
(急いで帰って合宿の準備しなきゃ)
どんな星が見られるのか…考えるとわくわくしてきた。
悩みはひとつ…『カラマーゾフ』だけだ。