125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「七星さん…?」
エレベーターホールの窓から、帰って行く七星の姿を見送っていた幸村は、病院の門の所で、学生と立ち話を始めた七星を『どうしたんだろう…』と見つめていた。
学生が一歩七星に近づくと、七星は一歩離れる。
「──!」
幸村は、エレベーターの降りるボタンを急いで押した。
「あの…ですから、忍足さんとの賭けは、忍足さんが待ち伏せしたり…しつこいから持ちかけたんです」
あたしはまた一歩、日吉さんから離れた。
「じゃあ…俺もつきまとえば賭けの対象にしてくれるのか?」
日吉さんもまた一歩近づく。
「でも、つきまとわれたら嫌いになりますけど…?」
あたしは精一杯の皮肉を込めて言った。
「…手に入れたら好きになって貰うよ…それまでは、多少の無茶は覚悟の上さ。何せ人から奪うんだから…」
日吉さんは、醒めたような…計算しているような、かすかな笑いを浮かべた。
「七星さん?どうかした?」
覚えのある、優しい声がした。
その声が耳に入ったとたん、あたしは思わず幸村さんの後ろへ逃げ込んだ。
(─しまった…あたし幸村さんに逃げ込むの2回目だ…まずい…よね)
しかし、もう後の祭。
驚いた顔の日吉さんから、あたしを隠すように幸村さんは片手を広げ、もう一方の手で、素早くあたしを背中に抱き寄せた。
「まさか、立海大の…」
「ああ、部長の幸村だ。君は確か…」
「…氷帝の…日吉です」
幸村さんの背中にいるあたしには、日吉さんが今どんな顔をしているか皆目わからないけど…声の調子から、かなりの動揺が窺える…。
(そりゃ…そうよね。手塚先輩とつき合っているはずのあたしが、なぜか幸村さんに助けられているんだもん…日吉さんまた誤解しそう。あ~もぅ)
「…なぜ…七星さんが…?一体どういう…関係なんです?あなたと七星さんは…」
日吉さんが幸村さんに聞いた。
(そりゃ…思うわよね。あたしが日吉さんなら、絶対聞くもん、うん)
「俺の全て」
(…え…)
「…え?」
あたしと日吉さんが同時に言った。
「とても大切なひとだ。だから…お引き取り願えるかな?」
背中越しに幸村さんの声があたしの耳に伝わる…。
「しかし…」
「君に渡す気などないよ」
ハッキリと幸村さんが言った。
あたしはドキ…とした。