125キロの加速 ナツのオトメ1*
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(あいつは、自分の限界を知っている…だから、勝てない試合に挑むはずがない。…限界まで走れば勝てると踏んだのか…?)
跡部は…逃げきったと言った。
『鮮やかだったな』と言った。
あいつは勝った。
忍足に…。
秒速125キロには遠く及ばなくても、あいつは…あいつの中の最高速度で駆けたに違いない。
(見たかったな…)
越前リョーマは、そう思った。
(誰かが…あたしの髪を撫でる…)
そっと目を開けた…。
見知らぬ天井と…あたしを見つめる瞳…。
(誰だっけ…あたしの意識が消える中、抱きとめてくれた人…見たことあるんだけど…)
ゆっくり何度か瞬く…でもぼんやりとした意識はまだはっきりしない…。混乱する…。
もの凄く眠い…。
足が重い…。
「七星…」
声のする方へかすかに顔を動かした。
「七星」
もう一度呼ばれた。
その人は、心配そうに覗き込む…。
あたしの手が暖かいものに包まれている…。
(先輩だ…。でも…眠くて頭が何も考えられない…。…カラマーゾフ先輩…じゃなくて…て…ああ…手塚先輩だ…手塚…)
「国光…さん?」
あたしは寝ぼけていると、頭と口が別行動を取ることがある…。
手塚先輩が何だか衝撃を受けたみたいで、手が大きくビクッと動いて、あたしの手にもそれは伝わった。
でもあたしは、お構いなしに、再び眠りに落ちた…。
あたしがちゃんと目を覚ましたのは、それから2時間後だった。
「手塚先輩!」
あたしは、驚いて起き上がった。さっきは痛くて動かなかった足も動く。
辺りはすっかり、黄昏ている。
「すみません、先輩。ご迷惑おかけしたみたいで…」
まだ、先輩はテニス部のジャージのままだ。
「いや…いいんだ」
何だか、先輩は落ち着かない。あたしの方をあまりはっきり見ない。
「送るから。ここにいてくれ。俺は部室で着替えてくる」
そう言うと、手塚先輩はあわただしく保健室から出て行った。
あたしもベッドから降りて、少し身繕いし保健室の窓から空を見て、夕暮れの風を頬に受けた。
「もう夕方か…。結構今日は頑張ったよね。自分でも思う。これで忍足さんが引いてくれればOKなんだけど…。あ…まだ日吉さんがいたっけ…」