125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「うちの忍足が、この子に横恋慕してな」
手塚の様子を探りながら、語り始める跡部。
(忍足だと!…先日の偵察だけでは飽き足りなかったのか…!)
「今日、我が氷帝にかなり無理に連れて来ていたようだったが…見事逃げられた…って寸法さ」
「無理に…だと…」
手塚の目が険しくなる。
「あれは鮮やかだったな」
光を目指して駆け抜けた七星の背中を思い出すように、腕の中の七星に視線を落とした。
「──!」
わけもなく跡部に怒りを感じてしまう。
「─その結果がこれだ。そら、受け取れ、手塚」
そんな手塚の感情などお構いなしに七星の小柄な身体を跡部はそっと移した。
「俺様は、親切この上ないからな。一応、跡部家の主治医に診せて点滴をしてきてある。後は気がつくまで休ませてやれとよ。じゃあな、あばよ」
それだけ言うと、手塚に背を向け、さっさとコートから離れる。
「あ、跡部…すまない…」
手塚にしては焦った調子で跡部の背に声をかけると、跡部もチラリと振り返り、手をわずかに振ると、跡部家の車がある正門へと帰って行った。
「大石、整理体操して、解散させてくれ」
跡部の背中を見送ると手塚は大石にそう指令を出し、保健室に向かった。
「あ…ああ!」
副部長の大石は、あわてて号令を部員にかけた。
「…………」
「…………」
リョーマと不二の前を手塚が通り過ぎる。
視線を合わせず、ただ素早く通り過ぎる…。
(七星…)
声には出さないが、リョーマも不二も思いは一緒だった。
(…無理して走ったのか…)
二人の視線が手塚の背中を引き戻すかのように、幾重にも絡みついたまま見送った。
保健室に急ぎながらも手塚は、初めて抱き上げた七星の体に触れる、腕や手が熱く感じるのを心の底から喜んでいた。
(七星…俺の…)
歩きながらも、あの日…生徒会室で壁際まで追い詰め、自分への警戒を強めさせてしまった七星が今…自分の腕に体を預け、無防備な状態で胸に顔を寄せてくれている…。
保健室が、果てしなく遠くにあればいいのに…。
そう思った時、保健室に着いてしまった。
部室で着替える不二は、色々と思案していた。
(手塚は、七星ちゃんが気づくまで、付き添うだろう…。顔を出した所で心良くは思うまい。七星ちゃんが気づけば、送るはずだし…今日は長期戦になるね、手塚)
リョーマも考えた。
(あいつは…)