125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「賭け?」
忍足さんが、少し驚いた顔をした。
「ええ。さっき忍足さんは、何でも言うこと聞くっておっしゃいましたでしょ?」
「おお…言うたで…?」
あたしは氷帝の正門へ、あと30メートルほどの所で立ち止まると、忍足さんを振り返って言った。
「ここから、あたしは正門に向かって走ります。忍足さんはあたしを追いかけて下さい」
「…は?」
「あたしが忍足さんに追いつかれずに、一歩でも先に正門から外に出たらあたしの勝ち。忍足さんがあたしを追い抜いたら忍足さんの勝ち」
あたしは、自分でもいい感じでにこ…っと出来たと思う。
「ほ~お。…んで?」
忍足さんがニヤ…と笑った。興味を持ったみたい。
「俺が追いついたら何貰えんねん?何なら、ハンデつけよか?5メーターでも10メーターでも」
「忍足さんが勝ったら…あたし忍足さんとおつき合いします。…ハンデくれます?」
あたしはちょっと悪戯っぽく両手を後ろに組んで、やや前屈みになり小首をかしげると、可愛らしく見えるように忍足さんを見上げた。
忍足さんは、急に凄い真顔になった。
日吉さんも表情を変えた。
そしていつの間にか、集まっていた何人かのテニス部員の人達も、面白そうな顔をした。
「ほな、もし七星ちゃんが勝ったら…?」
「あたしをあきらめて下さい」
キッパリと言った。
「…ハンデは…やれへんなぁ…」
ボソ…と忍足さんは言った。
(…だと思った)
あたしは氷帝学園の正門を睨んだ。
距離は約30メートル。
あたしが全力で走れる限界は約50メートル…。
全力で走る。あたしは自分に賭ける。
負けない。絶対に勝つ。
テニス部員の誰かが、スタートの合図を出してくれた。
蹴る、走る、風に乗る。
短距離は、相手の背中を見た瞬間負ける。
あたしは─忍足さんの背中を見なかった─
氷帝学園の正門から一歩出たあたしは、そのまま振り返り、忍足さんに手を振った。
「さよなら忍足さん」
そのまま 速度は落としたけど、少しでも氷帝から離れようと走った…。
「速っっ!」
「すげっ!」
「今の子、何で運動部の3年男子より速いんだよーっ?」
「…はっりゃ~見事逃げられてしもたわ。秘密兵器があるなんて、あんまりやで七星ちゃん…」
呆然とする忍足に、ホッとする日吉。
「ヤバい…」
膝がガクン…となった。
あたしの足が限界の危険信号を出した…。
(まだ氷帝から離れてないのに…)