125キロの加速 ナツのオトメ1*
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(調子…出ない)
青学テニス部テニスコート内のベンチで、越前リョーマはぼんやりと考えた。
普通の人なら大差ない違い…と言うより気がつかない。
変わらず強い。
ちゃんと勝てる。
しかし…
何かが…『足りない』
何かを…『求めてる』
それは何だ?…自問自答。
答えはわかってる。
(あいつ…夏休みに入ったのに、一度も来やしない。あの間抜けなアホ面…。もう随分見ていない。顔…忘れそうだ)
忘れてもいいのかよ!
(イラついてるね、越前)
越前を、我がことのように見透かす不二周助。
(かく言う僕も、七星ちゃんがいないと物足りないから、君に言えた義理じゃないけどね)
ふふ…と笑う。
『待つ』…とは言ったものの、あまりに漠然としていて手塚の不安は拭えない。
(約束したわけじゃない。むしろ、待っている間に高寺が他の誰かに奪われる可能性の方が大きい…)
いたたまれない気持ちになった。
(しっかりしろ!手塚国光!情けないぞ)
「よし!グラウンド10周で上がれ!」
部員に声を掛けると、たまらず先頭で走り出した。
「…空…」
初めて自分から見つめてくれた七星の視線を、惜しむように外すと、おもむろに窓を見た。
「好きだよ空の色は。流れる雲を飽きずに眺め、夕暮れから夜の帳が降りるまで、色が変わり続ける自然の絵筆に、感嘆したものだ」
ふ…と、遠く見る目で微笑み
「七星さんは…青空の下で走りたかったんだよね」
あたしに視線を戻した。
「俺もだよ。青空のコートで、ボールを打ちたかった…」
(…あたしと…同じ想いで空を見ていた人がいる…)
「七星さん、今日は来てくれてありがとう。君を呼んだのは、真田かな?」
「はい、そうです」
あたしは、瞬きをすると幸村さんに答えた。
「真田にも世話をかける…」
つぶやくように幸村さんは言った。
面会時間が終わる頃、
「あの…また来ます」
あたしは幸村さんに言った。
「本当…?」
幸村さんの顔が明るくなった。
「ええ…時間が許す限り…」
あたしは、幸村さんの役に立ちたくて、精一杯微笑みかけた。
それは『同情』だったのかもしれない…。
でも…あたしはその時、幸村さんの傍にいてあげたい…と思った。