125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「て…手塚先輩─!?」
困惑したような七星の声が、自分の胸の辺りから聞こえて来た。
いつの間にか七星を壁際まで追い詰めていた。
「──!!」
自分でもハッとしたが、七星を取り囲んで壁に押し当てている両手は、今さら外せない…。
「…俺は、自分では物わかりのいい人間のつもりでいたんだ。それが…こんなに心が狭いなんて…初めて知ったよ」
「あ…あの…」
七星は、どこを見ていいのかわからないのだろう…。何と答えればいいのかわからないのだろう…。ひたすら身を固くして、視線を下に落としている…。
「君はどうなんだ…?」
「え…?」
わずかに七星の顔が、上を向く。
「幸村を…どう思っているんだ?」
ピク…と七星が反応して、肩が揺れた…。さっき触れた柔らかな髪も、七星のわずかに朱に染まった頬を隠すように流れた。
「─…!」
幸村の名で七星が頬を染める…。
それだけで、己れの身の内から、何か熱く疼くものを感じた。
(俺を見てくれ…)
「…え…」
七星が顔を上げた…。
「俺を…見てくれ…」
自分の方が七星から視線を外した…。
「先…輩…?」
七星が少し驚いたように、手塚を見た。
「俺を…見て欲しいんだ…。幸村じゃなく…」
「先…」
再び七星の視線が床に落ちる…。
「…そんなんじゃ…ありません。幸村さんとは別に…」
七星がひと言ひと言…考えながら口にする。
「例え君がそうじゃなくても…幸村は君が…」
『好きだ』…と続けられなかった。
…手を外した…。
ホッとする七星の吐息を感じた。
「俺は…いつも君を困らせてしまう…そんな気は全然ないのに…責めてしまう…」
七星に背を向けたまま、手塚は言った。
「先輩…」
手塚の背中に声をかける。
「あ…あたしは…まだ自分でも子供だと思います…。だから…言われても…わからないんです…自分の気持ちが…。いつか…誰かを好きになるのかもしれませんが…まだ先だと思います。だから今は先輩…」
手塚が七星を振り向いた。
「いつもありがとうございます…としか言えません…」
ぺこり…と七星は頭を下げた。