125キロの加速 ナツのオトメ1*
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そう言うと、真田さんは肩にかけていたショルダーバッグから、例のマグネット将棋盤を取り出すと笑った。
「あ…」
それを見て、あたしも思い出して笑った。
「わかりました。じゃ、一局だけお相手します」
「すまんな」
いつもは怖そうな顔の真田さんが、ちょっと笑って嬉しそうに見えた。
手近な喫茶店に入ると早速、真田さんは将棋盤を広げた。
(いつも持ち歩いているのかしら…)
そう考えるとちょっと微笑ましく思えた。
一局だけ…とは言っても、碁や将棋は、打ち終わるまでに意外に時間がかかる。
途中、幸村さんから、お礼のメールが入った…。
…さっきのこと、思い出すと恥ずかしくなり、知らずに頬が熱くなった…。
(…迎えに来て貰ったし…あたしがお礼を言うべきよね…)
「…幸村からか?」
携帯画面を見て、考え込むあたしに真田さんはそう聞いて来た。
「え…何でわかるんですか?」
驚いて聞き返した。
「いや、何となく」
(…答えになってませんよ真田さん)
盤面と時計を見比べると、真田さんはあたしに言った。
「よかったら、俺にもメルアドを教えては貰えないだろうか?」
「…え?」
どうして…と思ったら…
「この続きをメールでしようと思ったのだ」
真田さんは、将棋盤を指差した。
(メール将棋…)
真田さんらしい…。
何だか可愛らしい…と思ってしまい、あたしは真田さんとアドレスを交換した。
いつの間にかもうすぐ夏休み─という話題が出るようになって来た。
学園祭実行委員も忙しい。
「あ、高寺さん、悪い。これ手塚に渡しといてくれる? 部活の後、生徒会室に顔出す…って言ってたから頼むな」
それだけ言うと実行委員長は、すぐ他の人に呼ばれて行ってしまった。
「手塚先輩に…?」
先輩とはあれから一度も会っていない…。
(テニス部に行くか、生徒会室に行くか…)
テニス部に行ったら…リョーマくん、不二先輩…何だか顔を合わせづらい人もいる…。
「遅くなりそうだけど…生徒会室にしよう」
あたしは、カバンと本と書類を持つと、生徒会室に足を向けた。
「七星ちゃん、最近ちっとも来てくれないね」
部活終了後の、テニス部の部室で着替えながら、菊丸英二は大石にこぼした。
「まぁ学園祭実行委員だし、仕方ないよ」
「あ~せめて夏合宿がご近所だったらな~。そしたら俺、絶~対七星ちゃんと花火と肝試しやる!」
意気込む菊丸がはしゃぐ。