125キロの加速 ナツのオトメ1*
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すでに『七星』という名前に、無条件で反応するようになってしまった手塚は、乾の見る方向に視線を飛ばすと同時に、足が勝手に駆け出していた。
「あの…それであたしに何か…?」
ニコニコと自分を見つめる忍足に、何の用だろう…と思いながら、精一杯聞いた。
「ん~せやなぁ…」
(どないな子か見に来ただけやったけど…実際話したり、動く姿見ると…くるわぁ)
「俺とデートせぇへん?」
「…は?」
「勝手な申し出は慎んでくれないか?」
「─手塚…」
声に振り向くと、青学テニス部部長、手塚国光が険しい目で自分を睨んでいた。
(…へぇ…冷静沈着なこの男が、モロに目線に感情が出とる…。おモロイなぁ。そんだけ、この子に惚れとるっちゅうことやな)
ふっ…と笑い、改めて手塚に向き直ると
「一日この子貸してくれへん?」
七星を指差して言った。
「ええ?」
(貸して…って何?何なの~?)
「高寺は物じゃない」
キッパリ言い放つ手塚に
(先輩…)
かばってくれる有り難さを感じながら、やはりまだ少し動揺してしまう自分がいることも知る。
(おモロイなぁ…彼氏、彼女言う割に何やギクシャクしてるで…これは日吉にもチャンスあり…ってことやな)
「そないムキにならんと、手塚。ちょっと青学テニス部の様子見に来ただけや。邪魔したな。ほな、お嬢さんもまたな」
わざとらしいくらいに、手塚に手を振り、七星に屈み込んで挨拶すると
『今日は何時に終わるん?』
素早く七星に囁く。
『…え?』
『手塚が見とる。急いで』
『…え…お…お昼…』
『待っとるから』
『え…あの?』
「ほな、手塚またな」
にっこり笑うと、正門から姿を消す忍足。
手塚もまた無言で七星に背を向けると、テニスコートに足を向けた。
「あの…手塚先輩」
ためらいがちに声をかけると、手塚も戸惑いながら振り向いた。
「あの…ありがとうございました。…この前もかばって下さって…いつも気にかけて頂いてばかりで…すみません」
七星は、手塚に深くお辞儀をした。
「いや…いいんだ。気にしないでくれ。君に恐縮されると困る…」
少し照れ臭そうに手塚も言った。
「ふふ…」
七星が笑った。
久し振りに手塚の顔を見た気がした。
手塚も目を細め、愛しい人を見つめた。