125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「将棋出来るのか?」
真田さんは聞いて来た。
「少しですけど…」
あたしは躊躇して答える。
「…謙遜だな。少し程度じゃ、この盤面は読めない」
真田さんは笑うと
「お前なら、この続きをどう打つ?」
そう言うと、あたしからよく見えるように、盤面を動かしてくれた。
「3七香」
問われるままに答えた。
「それから?」
あたしが言った通りに、真田さんは駒を置いていく。
「5八角」
「─で?」
「4三角」
「それで?」
「7四金」
「ふぅん」
「6二玉」
「ほう…」
「6三歩」
「来たな」
「7一玉…王手」
「終了…と。大した腕だな」
真田さんは、ベンチからあたしを見上げて笑った。
「今度、手合わせ願いたいものだ」
将棋盤をたたんでしまいながら、そう言った。
「あたしでよければ…」
あたしも真田さんに笑顔で答えた。
「凄いね、七星ちゃん。将棋出来るんだ!」
「え…」
菊丸先輩の声に驚いて、顔を上げたら…。
いつの間にか、青学レギュラー陣と少し離れた所に立海大メンバーがいて、あたしと真田さんを見つめていた。
「す…すみません、失礼します!」
あたしは、その場の雰囲気にいたたまれず、あわててテニスコートを後にした。
(何やってんだよ!七星のアホ!何でそんな嬉しそうな顔してのんびり将棋なんかやってんだよ)
(…これは…嫉妬なのか…。君が誰か他の奴に笑顔を向ける…それだけで心が乱れる…)
(あんまり見せて欲しくないよね。君が誰かと仲良くしてるシーンなんてさ。君の笑顔は僕だけに向けて欲しいよね)
(あ~らら、真田副部長、気づきなよ。幸村部長…切れちゃうかもよ)
「真田、練習試合の日程が決まったよ」
静かに真田に近づく幸村。表情はいつもと変わらない。
「そうか。悪かったな。全部任せてしまって」
「一応部長だから、これくらいやらないと…。じゃ失礼しよう」
「わかった。では失礼する。すまなかったな」
丁寧に青学レギュラー陣に頭を下げる真田。
ブン太と赤也も、きっちりお辞儀をして、立海大メンバーは帰途についた。
あたしは、焦って教室に戻った。もう皆帰ってしまって、教室はガランとしている。
ポケットから、さっき受け取った学生証を出した。いつもなら、出かけた後に学生カバンに入れ替えるから…なければ気づくのに…昨夜は…
また頬が熱くなった。