125キロの加速 ナツのオトメ1*
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《…あたしは裏門にいます》
そう送信すると、屋上から下へ向かう階段を重い足取りで降り始めた。
幸村は、携帯を閉じるとひと息つき傍らの真田に告げた。
「真田、後頼むよ。少し散策して来るから」
「ああ…練習試合…ってことでいいんだな?」
来た時と打って変わって晴れやかな表情の幸村を見て、連絡がついたな…と真田は思った。
「ああ」
にこやかに微笑むと、裏門へ向かって歩き出した。
「俺達も行ってみねぇ?」
ブン太がガムを噛みながら、こっそり赤也に囁く。
「そーですね。俺なんて、幸村部長の彼女を見るために来たようなもんすから」
へらっ…と笑うと切原赤也も同意した。
「マジマジーっ、今のすげーっ」
興奮して後ろを振り向き叫ぶ芥川慈郎。
「ほんまや。跡部から立て続けにエース取りよった。恋の力は偉大やわ」
氷帝テニス部のコートで、白熱戦を繰り広げる部長の跡部景吾と日吉若。
(チッまたか…!)
《30―0》
(妙に調子がいいな、今日の日吉の奴。嫌な所にビシビシ決めやがる)
「ありゃーっ!1ゲーム先取したで日吉。かっこええよ!」
「凄いですね。きっかけは何であれ日吉をあそこまで変えてしまうなんて…偉大な女の子ですよ」
と、感心して試合を見る鳳長太郎。
「ふふん…せやな。何や、ますます興味湧いたわ」
腕組みをして、笑いを浮かべる忍足侑士。
あたしは、裏門の桜の木に寄りかかって幸村さんを待っていた。
「七星さん…」
優しい声に呼ばれ振り向くと
「…困らせてしまったかな…?」
声をかけた幸村さんの方が、少し困ってような顔をして微笑んでいる。
「あ…え…少し…」
あたしは、うつむいて答えた。
「ふふ…正直だね」
幸村さんは優しく笑う。
「俺は…人が一目で恋に落ちるなんて、信じたことなどなかった…。白い天井、白い壁…。毎日うんざりするほど見てて、人恋しさはあったかもしれないけど、それがすぐ恋愛に結びつくはずなかったし…」
幸村さんがあたしを見つめる…。あたしも病室の風景を思い出す。全然動けず、ただ天井とわずかな空を見ていたあの日々を…。
「あの…立海大と青学がケンカ…なんてことは」
「ないよ、君が逢ってくれれば…俺の願いはそれだけだから」
クス…と幸村さんが笑った。
そして、笑顔が真顔になると…幸村さんの細い指が延び、あたしの髪に触れた…。
ドキ…とした。