125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「彼氏なの?」
もう一度千石さんが聞いて来た。
(えーい!多分千石さんとは2度と会わないだろうし、『彼氏つき』…ってことで、あきらめてもらおう。うん、そうしよう)
あたしは口を開いた。
「はい、そうです」
出来るだけにっこりして、『彼氏つき』をアピールした。
「誰?青学テニス部のメンバーなら全員知ってる」
「………」
(ヤバい…? 言わなきゃダメ…だよね)
あたしは仕方なく、真っ先に浮かんだ名前を口にした。
「越前リョーマ…」
「…越前くん…か…青学ルーキー…。やるね、君も。でも、可能性がないわけじゃない。越前くんから、君をかっさらうことも出来るさ」
さっきまでの笑顔と違う、不敵な笑みに変えると
「そのうち青学に顔を出すよ。きみに逢うためにね。もちろん越前くんにもきっちり挨拶するよ。その時は、越前くんから君を貰う」
じゃ…と手を挙げると、あっさり千石さんは帰って行った。
「………」
もっと絡まれるのかと、内心ヒヤヒヤしてたから、凄いホッとしたんだけど…
反面…もしかして、あたしはとんでもないことしたんじゃ…と焦り始めた。
何だか…千石さんの闘志に火をつけてしまったような…?
それに…千石さんが青学に挨拶に来る…って?
どういうこと…?
どうしよう…テニス部の人に迷惑かかっちゃう…よね?
あたしはボンヤリと屋台から離れ、考えながら歩いていた。
不意に風が吹き上がる。
一陣の風が、あたしの足元に数枚のレポート用紙を飛ばして来て止まった。
「……?」
拾い上げて、辺りを見回す。
少し離れた所で、散らばったレポート用紙を拾い集めている人がいた。
「あの…これもそうですか?」
レポート用紙を拾い集めている男性に近づいて、あたしは自分が拾った分を差し出した。
「え?…あ そうです。ありがとうございます」
涼やかな瞳であたしを見上げたその人は、嬉しそうにレポート用紙を受け取った。
「じゃ、失礼します」
「あ、待って」
会釈して帰りかけたあたしにそう言うと、その人は自販機から缶ジュースを買い、あたしに手渡す。
「お礼。ありがとう」
「どう致しまして」
さっきまでの緊張がほぐれて、爽やかな笑顔のその人にあたしも笑いかけた。
帰りの電車に揺られながら、ぼんやりと外を見ていたら…
「七星…」
と 誰かがあたしを呼ぶ声がする。