125キロの加速 ナツのオトメ1*
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…何か用…?」
ぼう…っとした感じで兄を振り返るが、いつもの裕太らしさが全然なく、姉の由美子が言うように本当に『恋煩い』なのかもしれない。
「聞いたよ、裕太。一目惚れしたんだって?」
笑いながら、床に座っている弟の横に並んで座る。
「……いいだろ、別に…」
少し頬を紅潮させると、兄に見られないように、そっぽを向く。
「どこの誰かもわからないんだって?」
気にせず、弟に視線を預けたまま、話を進める兄周助。
「しょうがないだろ…別れてから、気がついたんだから…」
相変わらず向こうを向いたままボソ…と話す。
「じゃ…もしどこの誰かわかったら、どうするの?」
愉しげな微笑みを浮かべて新たな質問をする兄。
「…そりゃ…告白してつき合って貰う」
「彼氏がいても?」
「……!」
躊躇する弟の横顔を兄は見た。
「この子でしょ?裕太の想い人」
デジカメの画面に、今日撮った七星の笑顔をアップさせて、裕太に差し出した。
「─え…?」
兄の言葉に振り返り、デジカメを覗き込んで愕然とする。
「─なんで、兄貴のデジカメに…!?」
「今日の彼女の待ち合わせの相手…僕だったんだ。僕もあの駅にいたんだよ。裕太」
にこ…と爽やかな笑顔を弟に向ける。
「…兄貴の彼女…?」
「うん、そんなところ」
しれっと答える兄。
「…何で兄貴なんだ…?」
「裕太はこの子が欲しいの?」
「えっ…?」
いきなりな問いに、頬を染め言葉に詰まる弟。
「だっ…そりゃ…って何言わすんだよ!」
焦って、視線を泳がせまくる。
「ふふ…あげないよ。ただでさえライバルが異様に多いんだから…」
くす…と笑うと、もう一度デジカメの画面に視線を落とし、
「不思議と人を惹きつけるんだよね…」
そう言うとじっ…と画面の中で楽しそうに微笑む七星を見つめる。
「ラ…ライバル…って?」
兄の言葉に急に不安感が湧き、チラリとデジカメを見つめる兄に裕太が視線を走らせた。
「やたらとモテるんだよ。彼女は」
やっとこちらを見た弟に笑顔で答える。
「越前に手塚に英二…ほとんどのテニス部男子部員…立海大の幸村…そして」
弟を指差し
「お前だ」
「…え…」
鼻先に兄の指がつきつけられびっくりする弟。
「り…立海大…ってマジで…?」
弟の顔に緊張が走る。
「多分ね。彼女連れ回さない方がいいかも…。他の奴に見せるほどライバルが増える…」
(今頃また、誰かにぶつかってなきゃいいけど…)
思い出して不二は、クスリ…と笑った。