125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「わ…痛そうだね。ホントごめん」
あたしの擦りむけた膝をしゃがんで見ながら、男の子は申し訳なさそうに言ってくれた。
「いえ!あたしこそ、急いでたから…ごめんなさい」
「急いでるって、どこへ行くの?
男の子は、自転車を起こしながらあたしに質問する。
「あ、駅です…約束してて…」
「じゃ乗りなよ。ほら、駅まで送るから」
男の子は自転車の後ろを指した。
「え…でも」
…と思ったけど、時間は容赦なく過ぎていく。
「お…お願いします!」
背に腹は変えられない。これ以上不二先輩を待たすわけにはいかないから、あたしは初対面の見も知らぬ男の子の自転車に乗せて貰った。
男の子は見事なスピードで駅に向かったけど、コンビニ前でいきなり止まり
「ちょっと待ってて、すぐだから」
言うなり、コンビニに駆け込んだ。
(不二先輩ごめんなさい)
心の中で叫びながら、男の子を待った。でもホントにすぐ出てきた。
「足出して」
「え?」
男の子は買ったばかりの絆創膏を、あたしの擦りむいたところに貼ってくれた。
「あ…ど、どうもありがとう」
「これ、持ってなよ。貼り替えるかもしれないだろ?」
あたしに絆創膏の箱を渡すと、男の子はちょっと笑って、また自転車を駅に向け全速力でペダルをこいでくれた。
「到着ーっ」
思ったより早く駅に着いた。
「ありがとうございました!」
あたしは深々と男の子に頭を下げ、
「あの…お名前…」
「あれ?裕太くんじゃありませんか」
あたしが男の子の名前を聞こうと思ったら、手間を省いてくれた人がいた。
「観月さん!」
『観月さん』と呼ばれた髪に柔らかくウェーブのかかった人が、あたしと『裕太くん』を交互に見比べ
「んふ、裕太くんの彼女ですか?いつの間にこんな可愛らしい方と?なかなか隅におけませんね、裕太くんも」
「ち…違いますって、観月さん!」
男の子…裕太くんは、焦って否定すると、あわててあたしの方を向き
「ほら、待ち合わせしてるんだろ?急げよ」
笑って、手を小さく振った。
「ありがとうございました!」
あたしはもう一度頭を下げると、不二先輩のいる場所に急いだ。
「何だ。違うんですか?」
「違いますよ。ほんとに、たまたまぶつかっちゃっただけで…」
自転車を押しながら、先輩の観月と並んで歩く、不二裕太。まさか、今の女の子の待ち合わせ相手が自分の兄とは、知るよしもない。
「それなら、名前くらい聞いて、知り合いにならなきゃダメですよ。あれほど可愛らしい子は、滅多にいませんよ?勿体ないことしましたね、裕太くん」