125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「あの…月と地球の相互関係…と言うか、月の地球への役割…なんですが…」
手塚先輩はあたしの疑問に熱心に耳を傾けてくれた。
「なるほど、月が地球から離れたら…ね。まず地球の自転速度が早くなるな」
「…え?」
「月は地球の自転を遅らせているんだ。その月がなくなれば、地球の一日は3分の1になる。それに自転軸も傾くから気候も大変動を起こすね。加えて月の引力による潮の干満がなくなるから、海が淀む。さらに海水位が上がるから、標高の低い所は海に沈む」
「………」
スラスラと答えてくれる手塚先輩の回答に、あたしは感嘆しながらも悲しくなってしまった。
「でもそれは、どれくらい未来か…だな。何十億年も先なら、もしかして太陽の寿命の方が先に来るかもしれない」
「太陽…」
「そう、太陽の寿命が尽きたら…その爆発に太陽系の星々は巻き込まれる。地球などひとたまりもないだろう」
「……」
太陽系の星が消えてしまう…。考えたら涙が勝手に出た。
「高寺?」
手塚先輩が、びっくりしてあたしを見た。
「あっ…ごっごめんなさい。先輩が言ったこと考えたら、悲しくなっちゃって…」
あたしは、あわてて涙を拭った。
「高寺は感受性が豊かなんだな。しかし、それはずっと未来の話だから、お前はそんな悲しいことを見なくて済むだろう」
先輩はそう言うと、また目が優しくなった。
「でも…人は生まれ変わるから、その時あたしは地球にいるかもしれない…」
我ながら、そんな未来を心配してどうするの…って思ったけど、言っちゃった。そしたら…
「…その時は、俺も何かに生まれ変わってお前の傍にいるようにしよう」
先輩は真面目に考えながら言った。多分あたしを慰めようとしたんだと思う…。けど…。
「約束する…。何があっても必ず俺がお前を守ろう」
そう言うと、テーブルの上に置いたあたしの手の上に、自分の掌を重ねてそっとあたしの手を包み込んだ…。
(え?あの…先輩? あたし…どうすればいいんですか?)
先輩は、そのままじっとあたしを見つめる…。
《キーンコーン…》
丁度予鈴が鳴った。
「では…。『カラマーゾフ』頑張れよ」
先に席を立つと、それだけ言って先輩は図書室を後にした。