125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「何でもいいだろ。帰ろうぜ」
不機嫌そうなまま、リョーマくんが言うから、あたしはちょっと返す言葉に詰まってしまい、うなずくだけしか出来なかった。
「う…うん」
「……」
「……」
リョーマくんは何も言わず、あたしの一歩前を歩く。あたしは…何か話題はないかと一日の出来事を思い返す。
(はぁ…何で七星が手塚部長の話するだけで、ムカつくんだ…? いや…部長だけじゃない。不二先輩や乾先輩でもムカつくのは変わらない…)
七星に気づかれないように、そっとため息をつく。
二人の後ろから街灯の灯りが差し、影が前に延びる。リョーマは、左肩に荷物をかけ、右手が空いている。七星は、右手にカバンを下げ、左手が空いている。二人は前後しているが…影は…手をつないでいた。
「…あっ…」
気がついたのは、リョーマだった。
「…?どうしたの?」
ふいにリョーマが立ち止まったので、七星が近づく。影がずれる…。
「動くな!」
ちょっとびっくりしたように、七星の足が止まる。影の手はそのままに…。
「…手…」
「え…?」
「…つないで いいか?」
七星を振り返らず、ボソ…と言うリョーマに
「う…うん…」
あたしはうなずくと、そっと手を差し出し、リョーマくんの指に自分の指をわずかに絡めた。
リョーマくんの手に力が入り、あたしの手をきゅ…と握った…。
ドキ…とした。
自分の顔が熱くなるのがわかる。あわててうつむく。
「…嘘だよな?」
「…え?」
あたしの手を引きながら歩き始めた…と思ったら、リョーマくんが口を開いた。
「…噂。不二先輩と…キスしたって」
「…キ…すっ…するわけないでしょ~!」
あたしは焦って否定した。
「じゃ…廊下で抱き合ってた」
「…微妙に違う…」
「お姫様抱っこ…」
「…それは 本当…」
「…廊下で?」
「う…うん」
「ふぅん…」
「……あの…」
あたしは誤解を解きたくてちゃんと説明した。
「…アホ」
「………」
「走る時は俺がいる時だけにしろ」
いきなりリョーマくんが振り返ってそれだけ言うと、またすぐ前を向いた。
「…うん、わかった…」
またドキ…っとした。
手をつないだまま歩く。
(あ…)
今日のリョーマくん、あたしに合わせてゆっくり歩く。…初めてだ。
それだけで嬉しい。