125キロの加速 ナツのオトメ1*
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「読み終えたら…?」
あたしは続きが気になり、先輩の言葉を繰り返した。
「…何か…頑張った褒美をあげよう…」
考えながら、先輩は言葉にしたけど、あたしは『褒美』と言う単語につられて、
「それなら頑張れそうです。先輩って優しいんですね」
あたしは、本当にそう思ったので、先輩を見つめていった。
「いや…別に」
何だかあわてた感じで先輩は席を立つと
「じゃ 生徒会だから…」
言いかけて、あたしに振り向き
「特別にアドバイスしておこう。それは上巻の終わりから面白くなるんだ。だから、それまで何とか我慢して読め。難関を越せば加速度的に面白いから、中下巻は3日もあれば読めるはずだ」
じゃ…と軽く手を振ると手塚先輩は図書室を後にした。
「この本…本当に面白くなるの…?」
疑問に思ったけど、手塚先輩が言うし、『ご褒美』も欲しいし~。
頑張ろう…と表紙に目を落とした。…でも…
「…明日から頑張ろう」
こうしてあたしと、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の戦いは始まった。
図書室の窓からテニスコートを見下ろす。
あ…リョーマくんがいる。遠目でも動きでわかるよね。…そういえば随分リョーマくんと話してないな。クラスが違うと、ホント話すきっかけなんてない…。
とりとめもなく、そんなことを考えて見ていた。
だから…不二先輩がコートのベンチからあたしを見ていたなんて全然気がつかなかった。
「しかし、大胆に出たな不二。勝率でも見えたか?」
練習が始まって間もなく、乾が不二に声をかけた。
「勝率を上げるためさ」
ふふ…と笑う。
部室に入った時から、不二責めは凄かった。
「不二ってば、ひどいよ~七星ちゃん抱っこしちゃってさ~」
口を尖らせて抗議する菊丸。
「偶然なんだよ。ほんとにたまたま僕が居合せた…ってだけなんだから」
とやんわり言いつつも、チラリと視線をリョーマに飛ばすのを忘れない。
「………」
(まさかあの噂の相手が『アホ七星』とはね…。最近ちっとも練習見にこないと思ったら、そういうことか…好きにすりゃいいだろ)
イラつきながら着替えると、荒っぽく部室のドアを閉めコートに向かった。
「今日はギャラリーの女子が妙に騒がしいと思ったらそういうことか」
2年の桃城が言うと
「関係ねぇよ」
と 海堂が答える。
「でも可愛いよな」
と河村が言えば
「だよね」
と大石が答える。