125キロの加速 ナツのオトメ1*
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それを見て、手塚先輩はくす…と笑うと
「─で、何を読んでるんだ?」
最初の質問を繰り返した。
あたしは、開いていた本を閉じ表紙を先輩に見せた。
「…意外に無謀だな。それ、つまらないだろう?」
「先輩、読んだんですか!?」
思わず目がどんぐりになる。
「ああ」
「かっ…完読ですか!?」
「もちろん」
『尊敬』と言う言葉はこの人のためにあるのかもしれない!あたしは今、心の底から手塚先輩を尊敬した。
「こんなつまらない本、しかもしこたま長い本を読破するなんて…先輩って、ただ者じゃありませんね」
あたしは多分目をキラキラさせて、手塚先輩に言ったに違いない。
「褒め言葉と受け取っておこう」
先輩の目が笑っていた。
「しかし…なぜこれを読もうと思ったんだ?」
先輩は、あたしの隣の椅子を引くとそれに座った。
「あ、現国の課題なんですよ」
あたしは半分に折ってあった、課題図書名の書かれたプリントを広げると、手塚先輩に渡した。
先輩はさっとそれに目を通すと
「課題なら期限があるだろ?」
「はい、でも一応夏休みかけてもいいみたいなんですよ。どれも長編なので」
「確かに。他のは大丈夫だが…それは夏休みかけても無理だ。読めない」
「…え、ど…どうしてですか?」
あまりにキッパリ言われ、ちょっと戸惑って先輩を見てしまった。
「つまらないからだ」
「……」
真面目な顔で先輩が言うから、あたしは思わず吹き出した。
「何がおかしいんだ?」
「だって先輩…つまらないのに読破してるんでしょう?先輩がつまらなさそうな顔で読んでいる姿を想像したら、おかしくって」
くすくす笑うあたしを見て、手塚先輩は少し照れたような顔をした。
「あたし、頑張ってこの本、読んでみます」
「なぜ?つまらないのに?」
「だって、読み終われば、この本に関しては先輩と対等です」
手塚先輩と対等なんて、そうあるものじゃない。
にっこり笑ってあたしは、先輩を見た。
「意気込みは認めるが…」
先輩は面白そうに微笑むと
「これは、上中下巻で約2,000ページある。俺はあまりのつまらなさに、上巻の半分読むのに3ヶ月かかった」
「………………え…?」
3…ヶ月ですか? 夏休み終わってますよね。
「どうする?」
目が笑ってる。
「やりましょう!」
あたしは握り拳を作った。負けてたまるか!
先輩は笑う。
「じゃ、読み終えたら…」
言いかけて ふと先輩が真顔になった。