125キロの加速 ナツのオトメ1*
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その日の放課後─
足は回復したけど…委員会もないけど…コートにも行けない…。
あたしの足が動くようになって、教室に戻れたのは、6時間目が始まる寸前だった。
ぎりぎりに教室に飛び込むと春菜が焦って声をかけてきた。
「七星ってば、どこ行ってたのよ~!心配したわよ。それより、ねぇ聞いた?」
春菜が妙に興奮している。それにクラスも、いつにも増してざわついてるし…。
「…何かあったの?」
「あったなんてもんじゃないのよ!テニス部の不二先輩が堂々と廊下で彼女と抱き合ってたんですって!」
「…へぇ…。不二先輩彼女いたんだ…」
あたしは、ついさっき見事なまでの至近距離で見た、不二先輩の笑顔を思い出し、ちょっとドキ…とした。
「え~あたしは、『お姫様抱っこしてた』って聞いたわよ!」
横にいた女子が口を挟んできた。
「え?あたしは、『抱き合ってキスしてた』よ!」
また別な子が寄ってきた。
「アタシが聞いたのは…」
また近くの子が…
話を聞いているうちに…
(こ…これ…もしかして、さっきの不二先輩とあたしのことじゃ……)
と思い当たった…。
しかし…
(何なのこれ…3年生の廊下を通り過ぎただけで、1年まで噂になってるなんて…し…しかも『キス』って何!キスって~)
あたしは軽くパニックになった。
「ね…ねぇ、春菜その彼女って…誰だかわかるの?」
恐る恐る聞いてみた。
「ん~それは、噂ではわからないけど、3年生の先輩は見てる人多いみたいだから、テニス部の練習に行けば誰だかわかるはずだわよ」
「………」
…行けない。これじゃしばらく行けないじゃない。不二先輩にも、迷惑かかるし…。
─で、どうしようか…って迷ったあたしが、放課後の今いる所は図書室。
窓からテニスコートが見えるし…、現国の読書感想文の宿題も出来るし…って思ったけど…何この本、全っ然面白くない。つまんない。選択間違えたわ。さっきから1ページも進まない。
腹が立つ。
「何を読んでるんだ?」
あたしが同じページ、同じ行を何度も目を往復させていると、ふいに覚えのある声が頭上から降ってきた。
「─手塚先輩?」
「なぜ驚く?」
あたしは無言でテニスコートを指差した。
コートからは部員達のボールを打ち合う音と声が聞こえる。
「…練習してますよ」
「今日は生徒会だ」
「あ!なるほど!」
あたしは手をポンと叩き納得した。