125キロの加速 ナツのオトメ5
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氷帝が負けたのは知っている。
七星さんがくる前に蓮二から聞いた。
もちろん手塚と跡部の試合の流れも。跡部は手塚を倒した。堂々と。
「……」
その場にいたかった。
こんな区切られた空間ではなく、青空の下、仲間と一緒にその試合を観たかった。
起こしたベッドのマットレスに寄りかかると、幸村は細く息を吐き静かに瞼を閉じた。
帰りの車の中は、会話が少ないまま景色だけが窓の外を流れていく。
どうしたんだろう。いつもの跡部さんはもっと快活で饒舌で、物思いにふけってぼんやりとしているような人ではないのに。
そこまで考えてハッとした。
そうだ、氷帝テニス部は、負けてしまったんだ。
横目で見た跡部さんの表情からは、悔しさは微塵も窺えない。氷帝テニス部二百人の頂点に立ち、手塚先輩にも勝ったのに。
それでも全国には届かない。
車の揺れに任せてため息をついた時、携帯の振動を膝に感じた。
(不二先輩……)
メールの差出人名に、少し胸がざわつく。
《あ、ごめんねー、不二じゃないんだ。菊丸だよ~。なぜ、俺からかってのは置いといて、ボーリングの罰ゲームで不二が倒れちゃったんだ! 不二は大丈夫って言うんだけど、具合悪そうでさ、よかったら七星ちゃん、こっちまで来てくれないかにゃ?》
「え……」
開いた文に目が止まる。
「どうした?」
跡部さんがゆっくりとこちらに視線を移動させる。
「あの、何だか不二先輩が倒れたらしいんですけど」
「不二が?」
若干焦るあたしの手から携帯を取った跡部さんは、メールに目を走らせた。
「菊丸の文を読む限り、取り立てて騒ぐことはねえな」
携帯をあたしの手に戻しながら、慌てることもなく跡部さんはそう言った。