125キロの加速 ナツのオトメ5
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「俺たち氷帝は青学に負けた」
跡部の目は、幸村から白いシーツ、ベッドの柵、そして自分の掌へと視線を這わせ、
「もう全国へは行けねえ。叶うならお前とも試合したかったぜ」
両手の指先をゆっくりと組み合わせた。
幸村の瞳もゆるやかに開かれたが、その眼差しはすぐに手元に落ちた。
「俺は……関東大会決勝の日に手術を受ける」
「……!」
跡部の視線が上がり、紙袋を包み込む幸村の手と決意に惑うことない眼差しに息を飲んだ。
「幸村さん、このお花もここに置いていいですか?」
洗面所から花瓶を手に現れた七星が、サイドテーブルに近づいた。
「ありがとう、七星さん」
物柔らかな幸村に、先ほどよりにこやかになった、と七星は思ったが、それがなぜかはわからなかった。
「じゃあな、幸村」
「失礼します、幸村さん」
「ありがとう、気をつけてね」
二人がいとまを告げると、幸村は名残惜しそうにベッドの上から胸元で手を振った。もちろんそれは七星に向けてだけだが。
「さて、帰るか。行くぜ」
病室のドアを閉めて廊下に出ると、跡部さんは当たり前のように言って歩き始めた。
(ちゃんと帰れるよね?)
一抹の不安がよぎる。たまに、ごくたまにだけど、跡部さんと一緒にいたために帰宅困難に陥るという、謎が発生するのだ。
「どうした? エスコートしねえと動けねえのか?」
跡部さんは振り返りながら優雅に手を差し伸べる。
「違います」
立ち止まったままだったあたしは急いで足を踏み出すと、少しだけ跡部さんの前に出た。跡部さんは笑った。