125キロの加速 ナツのオトメ5
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仮退院は幾度かした。
でも、今度こそという期待も虚しく体調は崩れ、否応なしにこの白い病室に引き戻された。
君と出会ったのは何度目の退院だったろう……。
柳が部屋を出てからの幸村は、あの日のことを思い出していた。
そして、妹の手作りお守りを見つめるともう一度力強く握りしめた。
「俺は……テニスをするんだ……」
会場は一時のざわめきを後に、次第に人の姿もまばらになり、先ほどまでの熱戦が嘘のように落ち着いていった。
「七星帰ろうか、もう出入り口も空いてると思うよ」
春菜が立ち上がり、人の流れを見ながらあたしに言った。
「そうだね」
ショルダーバッグを膝から取り、立ち上がりかけるとクラスメート達が駆け寄って来るのが見える。
「あー七星と春菜!」
「こんなとこで観てたんだ~」
「ね、どこか寄ってかない? 暑いしひと休みしないと家まで保たないって、今皆で話してたとこなの」
一気に周りがにぎやかになった。
青学が勝った勢いも興奮に手を貸している感じだ。
「行く行く!」
春菜が喜んでそう言った時、とうに試合の終わったコートに、姿勢を正し深々と頭を下げる跡部さんの姿があった。
「七星は?」
「行くよね~」
「え……」
友達の声にハッとして、あわててもう一度コートに視線を戻したけれど、そこにはもう誰もいない。
「七星?」
「あ、ゴメン。試合が終わったらお母さんと買い物に行く約束してるんだ」
あたしは両手を合わせ、ごまかすように笑顔を作った。
「あ、そうなんだ」
「わかった、じゃまた次の試合でね」
皆はあたしに手を振るとすぐ新しい話題に移り、真夏の日差しにも負けない明るい声は次第に遠のいていった。