125キロの加速 ナツのオトメ5
空欄の場合は夢小説設定になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いて欲しかったのは事実だけど、いてくれたらこのメモはなかったんだね……」
幸村はそのメモを押し抱くように、胸の前で合わせた手に包み込んだ。
「俺は君にすがってしまうのかもしれないな……」
そうつぶやいた幸村は、サイドテーブルの引き出しから手作りのお守りを取り出した。
「失礼する」
ノックの音に返事をすると、真田たちレギュラーメンバーが部屋に並んだ。
ちょうど幸村が、折り畳んだ七星のメモをお守りに入れている時だ。
「それは……?」
「ああ、妹がね、お守りを作ってくれたんだ。激励の手紙も付けてくれたから一緒に入れておこうと思って」
嬉しげな幸村にメンバーも、妹思い、兄思いの仲の良い兄妹に自然と笑みが生まれる。
「それより、俺が検査に行っている間も実況が途絶えたままだったらしいね?」
どうしてかな? と、笑顔のまま幸村は、ゆっくりとメンバーを一人ずつ見ていった。
「あ、あれはっ!」
思い当たる丸井があわてふためく。
「なるほどね」
しどろもどろで説明する丸井と切原に、幸村は怒るわけでもなくあきれたような顔を見せただけだった。
「準備万端、用意周到。弦一郎、それを二人に一枚ずつ書いて持たせて」
「うむ、そうだな。わかった。それはいい考えだな、幸村」
(げっ!)
(うへっ!)
怒られなかったのはよかったが、腕を組み深くうなずく真田に二人はげんなりした。
「ああ、最初に電池切れを起こした仁王にもね」
「プリ」
やぶ蛇だと仁王は思った。
(これ以上真田の書を持たされるのは勘弁ぜよ)
「では、また明日に」
「ああ、よろしくね」
真田の一声でくつろいでいたメンバーも、練習に向かうべく順に病室を後にした。
「精市」
「うん?」
帰り際、柳がそっと耳打ちをした。
「まだ高寺には言っていないのか?」
「……ああ、彼女に言うつもりはないよ」
ほんの一瞬、躊躇した幸村だが、きっぱりと柳に告げた。
「俺は元気な姿を見て貰いたいんだ。ベッドに縛りつけられている俺じゃなくて、テニスをする俺を見て欲しいんだ。だから言わない」
そう柳に言う幸村の目に、もう迷いは見られなかった。