125キロの加速 ナツのオトメ5
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「七星ちゃん戻ってたんだ……」
「そのようじゃの」
向かい側の椅子から立ち上がり、横にいる友達と何か話しながら笑う七星を見て驚く丸井に、そのことには気づいていたのかあっさりと仁王が言った。
「来たならこっちで俺たちと観ればよかったのに」
「そうもいくまい。高寺は友達を待たせて幸村の所へ行ってくれた。戻った時は手塚と跡部の激闘の最中だ。青学の生徒ならば、あの試合は青学の応援席で、全員一丸となって手塚を応援するのが心情と言うものだろう」
残念がる丸井に静かに真田が言った。
「さあ、俺たちは幸村に結果報告と、明日のために練習だ!」
「おうっ!」
一斉に立ち上がった立海レギュラーメンバーに、周りから羨望と尊敬、畏怖の眼差しが集まる。
「立海だ」
「立海だよ」
「王者だ」
「すげぇ……」
「何かこうオーラが違うよな」
人々の視線を割り、堂々とした背中はそのまま会場の外へと消えていった。
検査が終わり、急いで戻った病室には待っていてくれるはずの七星の姿はなく、
「あれ……売店かな?」
「あ、お見舞いの女の子? その子なら……」
看護師の申し訳なさそうな説明に、幸村はひどく気落ちしてしまった。
だが、時計を見ればかなりの時間が過ぎている。これでは仕方ないか、と無理に自分を納得させようとしたが、やはり待っていて欲しかったと思う自分もいる。
(はあ、何だか自分の小ささが嫌になる……)
ため息をつきながらベッドに戻る幸村は少しだけ憂鬱になる。
(そうだ……青学の試合、真田たちはちゃんと実況してくれたんだろうな?)
ふと思い出し、確かめようと携帯に手を伸ばした幸村は、その下のメモ用紙に目が止まった。
(七星さん?)
きちんと二つに折られた紙には、レギュラーからの電話連絡が回復しなかったこと、検査が長引くから待っていては迷惑になると思ったこと、そして幸村への謝罪が書かれていた。
「……」
思えば幸村は、七星の文字を初めて見た気がした。
「可愛らしい字を書くんだね、君の姿そのままに……」
知らずに微笑みがこぼれる幸村の中から、さっきまでの憂鬱さがすっとなくなるのがわかった。
メールで見ていた無機質な文字と違い、書かれた文字にはぬくもりと優しさが伝わってくる。