125キロの加速 ナツのオトメ5
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「それにしてもよ……何で切れちまったんだろ」
丸井が一度しまった携帯を取り出し、納得がいかないように充電切れで暗いままな画面を見つめた。
「機種が古いとかっスかね?」
「そうでもねぇよ」
覗き込むようにしてきた切原を見るわけでもなく、今は何の連絡手段にも使えない携帯を、その手の中に包み込んだ。
「忘れているな、丸井」
「え?」
コートに現れた跡部と手塚の姿を細い眼差しで追う柳が言った。
「お前はここへ来る前の移動中、携帯ゲームをしたり動画を見たりはしていなかったか?」
「あ……」
「あれは意外と電池を食うからな。一見減っていないようでも、次の立ち上げで一気に減り始めたりもする。注意が必要だ」
思い当たったのか、あきらめたように息を吐くと丸井は足元のバッグに無造作に携帯を放り込んだ。
あたしが春菜の隣に戻れたのは、手塚先輩と跡部さんの激しい打ち合いの真っ只中のことだった。
「も~七星てば、一体どこ行ってたのよ」
心配と焦りとが入り混じった顔の春菜が、コートとあたしをひっきりなしに見比べる。
「ごめん、後でゆっくり謝るから、今は手塚先輩の応援しよ」
春菜には申し訳ないと思ったけど、まさか神奈川まで往復して来たとも言えないし、とにかく試合に集中しようとコートに目を向けた。
(戻って来たか……)
見覚えのある姿が、ぽつりと空いていた席を埋めると柳の口元がわずかにほころんだ。
「あーっ、また返したっスよ!」
「スゲーな」
「接戦だぜ」
いつ終わるとも知れない跡部と手塚のタイブレークの応酬に、立海のメンバーも釘付けになる。
「しかし、あれでは手塚の肩は……」
「ああ、もう限界だろう」
真田に柳が答えた時、ついにボールの動きも止まった。
瞬間、悲壮にも満ちた声が青学側応援席から沸き上がったが、それはたちまちのうちに大きな拍手と声援に変わった。勝者の跡部が手塚の腕を取り、高々と掲(かか)げ称(たた)えた姿に惜しみない拍手は鳴りやむことはなかった。
「うわ~! カッコいいな跡部さん! もう惚れちゃうよ~どうしよう」
手を叩きながら興奮した春菜は、手塚先輩残念と言いながらも叫んでいた。