125キロの加速 ナツのオトメ2*
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サーブやボレーの詳しい名前なんて、全然わからない。
だから見たまま、桃城先輩がラケットで打った瞬間、
「右へ」
と言った。
でも海堂先輩は、左側へ打ち返した。桃城先輩が、待ってましたと打ち返し、海堂先輩が拾う。
「ボール2個分届かない」
あたしが言った通り、海堂先輩の返球はネットに引っ掛かって落ちた。
(これは……)
不二先輩が黙ってしまった。
「あの、まだ次の一手読みますか?」
あたしは、そっと不二先輩の横顔を見て言った。
「次の一手…?」
不二先輩は目を開けて、あたしを見た。
「はい、あたしの表現だと次の一手です。相手がどこに打ち、自分が次にどこに打ち返すのが最上の手か考えるのは、碁もテニスも変わらないと思います」
あたしは真っ直ぐ不二先輩を見た。
「…凄いよ。君は」
不二先輩は、あたしに微笑んだ。
「…それしかなかったんです。考えることしか…」
「…え?」
「事故直後、あたしに残された感覚は、聴覚と思考だけでした…。生きてるのが不思議…そう言われる中、囲碁好きな叔父が退屈しのぎにって、あたしの枕元で囲碁や将棋を強制的に叩き込んでくれたんです。使えるのは頭だけでしたから、記憶と思考はフルに鍛えました」
あたしは、不二先輩に微笑みを返した。