仁王さんと並んで、柳生さんの声もスピーカーから流れて来た。そして、わあっというどよめきと喝采が、そのすぐ後から追いついて来た。

『おお、間に合わなかったようじゃのう』
「え、何がですか？」
飄々としているのに、どこか楽しむような感じに仁王さんの声は聞こえる。
それがなぜか今のあたしには、焦りを感じさせる。

幸村さんの携帯から聞こえてくるのは、拍手と声援、そして……氷帝コールだ。
青学は負けてしまったのだろうか。気が気ではない。

「あの、仁王さん」
「仁王」
遠慮がちに携帯に向かって声をかけたら、幸村さんの声と重なった。
『了解じゃよ、幸村。その先は言わずともよか。お前さんに睨まれては元も子もないからのう』
仁王さんはそう言うと、また愉快そうに笑う。
あたしは、携帯と幸村さんを交互にチラチラと見た。
でも、幸村さんは特に何も言わなかった。

『最初のダブルス２は、青学の菊丸と桃城が、出られなくなった大石の代わりにガッチリと組んで、お互いを高め合ったって感じだったぜ』
いきなり声が変わった。

「丸井さん？」
『そ、俺だぜ』
丸井さんの声も楽しそうにはずんだ。