125キロの加速 ナツのオトメ5
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携帯の振動が膝に置いたバッグの中から伝わった。
取り出して確認すると、柳さんからのメールだった。
《今、話せるか?》
(え……)
思わず画面から目を上げた。
向かい側の観客席にいる柳さんと視線が合うと、柳さんは軽く手を上げゆっくりと立ち上がった。
あたしは戸惑った。
その時ちょうど、青学と氷帝の試合が始まってしまったからだ。
試合はダブルス2で菊丸先輩と、大石先輩の代わりに桃城先輩がペアで、氷帝からは向日さんと忍足さんだ。
(どうしよう……)
試合はもちろん気になる。でも……。
視線の先にいた柳さんはすでに客席から姿を消していた。
(……!)
あたしは意を決して席を立った。
「ごめん、春菜。ちょっと行ってくる」
「え? 行くってどこへ? もう試合始まってるのに」
すぐ戻るから、とだけ告げてあたしは客席から外へと向かった。
耳にはボールがコートに跳ね返る音が聞こえた。
「すまないな、青学の試合だというのに」
出口から出ると柳さんが声をかけてきた。
「あ、いえ……」
あたしは焦って首を振った。
ボールの音や歓声はコートから離れても聞こえる。
「実は精市のことなんだが……」
少しだけ柳さんが言いよどんだ。
あたしはそれだけで、胸の奥に不安感がわけもなく広がった。