125キロの加速 ナツのオトメ4*
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「あ…雨が上がったようですね」
まだ談話室に残り、雑誌を読みふけっていた観月がふと辺りが明るくなったような気配に気づき、座っていたソファから窓ガラス越しの空を見上げた。薄暗かった雲間から陽射しが差し始めている。
停電していた聖ルドルフの学生寮の配電盤をいじり、強制通電をさせてからしばらくしてのことであった。あれほど荒れ狂った天気もすっかり影をひそめ、今は見る間に眩しいばかりの青空が現れ夏の感触が戻って来た。
「わかりました。では気をつけてお帰り下さいね」
「赤澤から?」
窓からどんどん広がる青空をただじっと見つめていた観月の携帯が鳴り会話が始まると、それを聞くとはなしに聞いていた木更津も読んでいた週刊誌から顔を上げ観月へと向けた。
「ええ、氷帝側が用意した送迎バスで家に帰るそうですよ。冠水で鉄道がストップしたそうですから」
携帯を閉じポケットにしまいながら観月も答えた。
「電車止まってたのか。そりゃ災難だったな」
「僕達も充分災難でしたよ」
観月が皮肉るようにつぶやいた。
観るはずだった氷帝と青学の練習試合。関東大会への切符を逃した自分達には確かにもう出番がない。
青学に雪辱戦を挑もうとするなら、来年…高等部に進学してからになる。
レギュラーメンバーが揃っている間の最後の練習試合。その相手が都合よくも青学と来ている。
(借りは返させて頂きますよ…不二周助)
湧き上がる入道雲を睨むように観月は見つめ続けた。
「あ~疲れた!」
「ぐわーあち~」
「やってらんねー」
「かき氷~」
「俺は麦茶でいい~」
部室に戻った青学メンバーは、バッグを床に投げ出すと次々と机に突っ伏しぐったりとしていった。
「ミーティングを始める! だらしのない言動はするな!」
暑さにも変わらぬ手塚の檄が飛ぶ。
「部長~暑くないんすか?」
ややダレ気味な桃城の疑問に
「気持ちの問題だ」
無表情に答える。
「どういう気持ちだとああなれるんすかね」
「心頭滅却だよ」
納得出来かねる様子の桃城に、やはり飄々とした不二がにこやかに答えた。
(不二先輩じゃ参考にならねーな…)
手をうちわにパタパタと生暖かい風を自分に送りながら、余計暑くなった気がする桃城だった。