「観月さん!?」
あたしはびっくりして立ち止まると、観月さんを思わず凝視した。
「とっくにお帰りになったんじゃ…」
「ええ、帰りましたが途中で気が変わりまして、引き返して来たんですよ」
「え…？」
観月さんは、柔らかい微笑みを浮かべると、あたしを真正面から見つめる。

(え…あ、あの…)
観月さんも整った顔立ちをしているので、そんな風にジッと見つめられたりすると、かなり焦る。
「…僕としてもこれは賭けだったんですが…事はうまく運んでくれたようです」
「……？」
あたしは何のことだろう…と少しだけ首をひねり観月さんの次の言葉を待った。
「あなたがもし一人で出てきたら…遠慮はしない…そう思っていたんですよ」
くす…と観月さんが小さく笑う。
「え…あの、遠慮…ってそれはどういう…」
意味なんでしょう…と続けるつもりが、

「僕はあなたが好きです。多分初めてお逢いしたあの日から…」

あたしの言葉は、思いもかけない告白で行き場をなくし、次の言葉すら忘却の彼方へと押し流されてしまった。