（跡部に向日…？　ダークホースやん…）
いきなりフェンスをガシリと掴むと、忍足は焦って考えをまとめようとした。
（跡部の好み…気ィ強い女…アカン七星ちゃんむっちゃ気ィ強いわ。岳ちゃんの好み…ノリのいい子…ノリ…ノリ…？）
忍足が、七星のノリはどうだったかと考えているうちに、不二･河村組があと１ポイント…というところまで、またたく間に追い込まれていた。

「彼女は席に戻ったってのに、不二の奴巻き返すタイミングがズレてるじゃん」
向日が、不二を目で追いながら言う。
「さぞかし不二も驚いてるだろうぜ」
フェンスに寄りかかったまま、跡部も言った。

「さぁて…じゃあ実験してみるか」
「実験…って何さ跡部」
デュースが続き始める中、跡部はフェンスから体を離すと
「お嬢ちゃんの威力」
と、愉快そうな笑いを口元に寄せた。
「お嬢ちゃん、ちょっと」

七星の座るベンチの後ろに近づくと、跡部は声をかけた。
「─え？」
あたしですか？　─という顔の七星に、にっ…と笑みを浮かべ、黙って手招きをする跡部。