「こいつ今日は臨時マネだから、サボらせないでくれます？」
あたしの腕を引っ張りながら、リョーマくん、忍足さんに、ニヤ…と笑った。

「さよか…」
忍足さんもちょっと呆気に取られたようで、スタスタと歩き去るリョーマくんと引っ張られて行くあたしを、解放せざるをえなかったようだ。


「臨時マネだなんて聞いてないよ？」
リョーマくんに引っ張られながら、コートに連れて行かれたけど、あたしそんな話全然聞いてない。正直焦った。

「当たり前だろ。俺専用だから」
しれっとしてリョーマくんが言う。
（…え？）
忍足さんから、あたしを連れ出してくれたリョーマくん…。有り難くて、感謝するけど…二人手を繋いでコート内のベンチに向かうまで、たっぷりみんなの視線の晒(さら)し者になった。

恥ずかしかった。
幸村さんのさっきの視線を思うと、とても立海大ベンチは見られない。

「そこ座って。はい、俺の荷物ちゃんと見ててよ」
リョーマくんが、テニスバッグからラケットを取り出す。
「越前、何してる。早く来い」
手塚先輩の集合がかかる。
「うぃっス」
帽子を被(かぶ)り直すと、リョーマくんが、コートに視線を向ける。