ティアキン二次小説
【決別】
―――ゲルド地方、ゲルドの街。
「伯父様、お久しぶりです」
「おぉ、■■■■。久しいな」
魔王になったガノンドロフは珍しく優しい声音で玉座の間に入ってきたゲルドの若い女に言葉をかける。ハイラルを旅していた彼の姪御がゲルドに帰ってきたのだ。
秘石を手に入れ、これからハイラル王家と争うのに最高のタイミングで帰ってきたのだ。声が弾むのも無理ないことだった。
「陛下に申し上げたいことがございます」
「なんだ、申してみよ」
「陛下の発する気によって倒れる兵が続出しております。妊婦や幼子の中には命を落としてしまう者も……」
「…………」
「ヒンヤリメロンですら砂漠から消えました。溜め込んだ食料も陛下の気に触れてダメになってしまっています」
姪御の口から語られる問題はガノンドロフが魔王になった後に生じるようになった瘴気が原因だった。お前のせいだと言われているようで魔王の機嫌は少しずつ悪くなっていた。
「――それを打開するにはどうすべきだとお前は考えているのか?」
「そのゾナウの秘石を、破壊してもらいたく存じます」
「…………」
その時、今まで不動だった魔王の眉がピクリと動く。よほど気に障ることを言われたのか、静かに怒りを乗せて声を震わせた。
「お前達の為に王妃から奪ったこの秘石を壊せと……お前は申すのか」
「今はそれしか、ゲルドの生きる道はありませぬ。現状、多くのゲルドの民が私の考えに賛同しています」
このままではハイラル王家と戦わなくてもゲルドは滅んでしまう。その為にもすぐさま秘石を破壊してほしいのだと魔王の姪は懸命に訴えた。
「秘石を破壊すれば貴方様の強すぎる気を抑え、同時にあちらの戦力を削ぐことにもなります。何卒ご決断を……!」
「片腹痛い。この力の素晴らしさ、お前達はなぜ理解できぬのだ……!」
「!」
ザクリと、玉座の間の壁に刃物が刺さる音がした。魔王が突然投げた槍が姪の顔スレスレのところを通って壁に刺さったのだ。
「今日中に、この街から出よ」
「陛、下……?」
「今ここで殺したりはせん。お前も、お前に賛同する者達も我が護るべきゲルドの民だ」
「……伯父様」
「だが、夜が明けた後は……分かっているな?」
「はい……」
「これが、我がゲルドの民にしてやれる最後の慈悲だ」
「……謹んでお受けいたします」
「――――」
「伯父様、次に会う時は戦場で……」
「ああ、覚悟しておけ」
「……はい」
◇ ◇
そうして数時間後、ゲルド族の大半が街から出て行った。後に残ったのは魔王を崇拝する数人の兵と、瘴気に侵されて動けなくなった老人達だけだった。
「寂しくなるな……」
ゲルドの民の大移動を王宮の二階から眺めながら、魔王は誰に言うともなしに呟いた。
東の空には真っ赤な月が街を出た彼らを追い立てるように昇り始めていた。
―――ゲルド地方、ゲルドの街。
「伯父様、お久しぶりです」
「おぉ、■■■■。久しいな」
魔王になったガノンドロフは珍しく優しい声音で玉座の間に入ってきたゲルドの若い女に言葉をかける。ハイラルを旅していた彼の姪御がゲルドに帰ってきたのだ。
秘石を手に入れ、これからハイラル王家と争うのに最高のタイミングで帰ってきたのだ。声が弾むのも無理ないことだった。
「陛下に申し上げたいことがございます」
「なんだ、申してみよ」
「陛下の発する気によって倒れる兵が続出しております。妊婦や幼子の中には命を落としてしまう者も……」
「…………」
「ヒンヤリメロンですら砂漠から消えました。溜め込んだ食料も陛下の気に触れてダメになってしまっています」
姪御の口から語られる問題はガノンドロフが魔王になった後に生じるようになった瘴気が原因だった。お前のせいだと言われているようで魔王の機嫌は少しずつ悪くなっていた。
「――それを打開するにはどうすべきだとお前は考えているのか?」
「そのゾナウの秘石を、破壊してもらいたく存じます」
「…………」
その時、今まで不動だった魔王の眉がピクリと動く。よほど気に障ることを言われたのか、静かに怒りを乗せて声を震わせた。
「お前達の為に王妃から奪ったこの秘石を壊せと……お前は申すのか」
「今はそれしか、ゲルドの生きる道はありませぬ。現状、多くのゲルドの民が私の考えに賛同しています」
このままではハイラル王家と戦わなくてもゲルドは滅んでしまう。その為にもすぐさま秘石を破壊してほしいのだと魔王の姪は懸命に訴えた。
「秘石を破壊すれば貴方様の強すぎる気を抑え、同時にあちらの戦力を削ぐことにもなります。何卒ご決断を……!」
「片腹痛い。この力の素晴らしさ、お前達はなぜ理解できぬのだ……!」
「!」
ザクリと、玉座の間の壁に刃物が刺さる音がした。魔王が突然投げた槍が姪の顔スレスレのところを通って壁に刺さったのだ。
「今日中に、この街から出よ」
「陛、下……?」
「今ここで殺したりはせん。お前も、お前に賛同する者達も我が護るべきゲルドの民だ」
「……伯父様」
「だが、夜が明けた後は……分かっているな?」
「はい……」
「これが、我がゲルドの民にしてやれる最後の慈悲だ」
「……謹んでお受けいたします」
「――――」
「伯父様、次に会う時は戦場で……」
「ああ、覚悟しておけ」
「……はい」
◇ ◇
そうして数時間後、ゲルド族の大半が街から出て行った。後に残ったのは魔王を崇拝する数人の兵と、瘴気に侵されて動けなくなった老人達だけだった。
「寂しくなるな……」
ゲルドの民の大移動を王宮の二階から眺めながら、魔王は誰に言うともなしに呟いた。
東の空には真っ赤な月が街を出た彼らを追い立てるように昇り始めていた。
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