アストル短編まとめ

【澄んだ星空と私と奴】


 どんな風に星を見るのか知りたいとスッパに請われたのはいつだったか。
 その時は奴らと私とが結託してしばらく経った後だと思う。

 星の動きを見て占いを行うのだと説明してはいたが、占いの方法を請う人間は奴が初めてだった。

「ゲルド砂漠は砂嵐でもこない限り星が見放題なのは助かるでござるな」

 そんな事を若干嬉しそうにしていたのが印象的だった。
 いざ天球儀を使って簡単な星の動きの読み方を教えてやると意外とすんなり事が運んだ。
 若干たどたどしいながらも教えられた通りに星を見つけ読む姿に、なるほどこの者が筆頭幹部に挙げられる程聡明なのだという認識を深く刻みつけられた。

 印象的と言えば、いつもは人に恐れをいだかせるような太く低い声が、教えを請う際はどこか明るく澄んでいたことだ。

「澄んでいるな」
「あぁ、今宵も星が綺麗でござる」
「――。そうだな」

 彼の声に関してポツリと出た感想は星空へのものだと勘違いされてしまったが、訂正はしなかった。
 言えば今だけ澄んでいるであろう声が一瞬で元に戻ってしまいそうだったから。

「そろそろ戻ろう。この辺りは安全とは言え、夜は冷える。お前は意外と筋が良い。今度はもっと難しい読み方を教えてやる」
「……。今後もよろしくお願いするでござる」

 しばらく星を眺めた後、私は天球儀をしまう。
 スッパは大層名残惜しそうにして、アジトへ戻っていった。
 それに遅れること数秒、自分もアジトへの帰途についた。
 奴の澄んだ声も、また二人で星を見に行くというのも、どこか嬉しいと感じる自分がいたが結局なぜそう思ったかは今も分からず終いである。

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