風花雪月二次小説
【数年ぶりのはじめまして】
「――初めまして、二人とも。私はエーデルガルト=フォン=フレスベルグ……この一年、よろしくね」
数年ぶりに顔を合わせたフレスベルクの血を引く少女は、俺の事を全く覚えていなかった。
生母に似た艶やかな亜麻色の髪は、なぜだか白銀に変わっていて思わず息を飲む。
幼かった二人が過ごしたあの日々は既に記憶も霞む程に遠い思い出なのだと、その髪に突きつけられる心地がして胸がチクリと痛んだ。
「――――」
それでも、星屑が流れるような見事な銀髪は彼女の薄い菫色の瞳にとても似合っていて、気づけばその髪色に目を奪われていた。
「……どうしたの?」
怪訝そうなエーデルガルトの声に我に返る。
「あぁいや、すまない。少しぼぅっとしてしまって……」
「おやおや、俺の存在も忘れて帝国の皇女様を長々と見つめるとは……」
「クロード……」
言葉を濁していると、金鹿学級の級長であるクロードが話に割り込んできた。
「もしやファーガスの王子様はエーデルガルトに一目惚れでもしたのかい? こりゃ入学早々大事件だな!」
是非とも堅物そうなお二人さんを肴に宴でも催したいねぇ!と、クロードは楽しげに言い放つ。
「?! ……ち、違っ…!」
「ば…っ…!?」
タチの悪い冗談にエーデルガルトは目を吊り上げて声を荒らげかけるが、その後すぐ頭を抱えてため息をついていた。
「……ちょっとクロード、顔合わせの場で一々茶化さないでくれないかしら」
「いやぁ、すまんすまん。弄りがいのある人間を見かけるとつい、な?」
「もう、人をからかうのを楽しむなんて……。貴方って悪趣味ね」
油断ならないわと言葉はきつくはあったが、声は幾分か柔らかい。
リーガン家の後継の悪戯っぽいウインクに彼女の纏った堅い空気がほぐれたようで、ようやく年相応の表情が垣間見えた気がした。
「……ほら、貴方も早く自己紹介を済ませてくれない? この調子じゃ級長同士の顔合わせだけで一日が終わってしまうわ」
この後の予定も沢山詰まってるのに先が思いやられると、エーデルガルトは呆れ顔で俺をたしなめる。
(――ああ)
その顔が……いつか俺に踊りを教えてくれた勝気で気難しい少女のソレとダブり、不覚にも胸がじんわり温かくなっていく。
(……あの時も、よくこんな顔をして俺を叱っていたんだったな)
あの頃とは何もかもが変わってしまっただろう今でも、確かに残るものがあることに酷く安堵している自分がいた。
「……分かった」
それでようやく、数年ぶりの義理の姉との再会に僅かに浮ついた心が鎮まった。
深呼吸をして、俺は改めて二人の級長に向き直る。
「俺はディミトリ=アレクサンドル=ブレーダッド。こちらこそ、この一年よろしく頼む」
昔……王都で出会った美しい亜麻色の髪の少女が帝国に戻った後、一体その身に何が起こったのか。部外者の俺には聞けないし、聞く気はない。
だが今はただ――彼女が彼女の信じる道を悔いなく進んでゆけるよう、心の中で強く祈るばかりだった。
「――初めまして、二人とも。私はエーデルガルト=フォン=フレスベルグ……この一年、よろしくね」
数年ぶりに顔を合わせたフレスベルクの血を引く少女は、俺の事を全く覚えていなかった。
生母に似た艶やかな亜麻色の髪は、なぜだか白銀に変わっていて思わず息を飲む。
幼かった二人が過ごしたあの日々は既に記憶も霞む程に遠い思い出なのだと、その髪に突きつけられる心地がして胸がチクリと痛んだ。
「――――」
それでも、星屑が流れるような見事な銀髪は彼女の薄い菫色の瞳にとても似合っていて、気づけばその髪色に目を奪われていた。
「……どうしたの?」
怪訝そうなエーデルガルトの声に我に返る。
「あぁいや、すまない。少しぼぅっとしてしまって……」
「おやおや、俺の存在も忘れて帝国の皇女様を長々と見つめるとは……」
「クロード……」
言葉を濁していると、金鹿学級の級長であるクロードが話に割り込んできた。
「もしやファーガスの王子様はエーデルガルトに一目惚れでもしたのかい? こりゃ入学早々大事件だな!」
是非とも堅物そうなお二人さんを肴に宴でも催したいねぇ!と、クロードは楽しげに言い放つ。
「?! ……ち、違っ…!」
「ば…っ…!?」
タチの悪い冗談にエーデルガルトは目を吊り上げて声を荒らげかけるが、その後すぐ頭を抱えてため息をついていた。
「……ちょっとクロード、顔合わせの場で一々茶化さないでくれないかしら」
「いやぁ、すまんすまん。弄りがいのある人間を見かけるとつい、な?」
「もう、人をからかうのを楽しむなんて……。貴方って悪趣味ね」
油断ならないわと言葉はきつくはあったが、声は幾分か柔らかい。
リーガン家の後継の悪戯っぽいウインクに彼女の纏った堅い空気がほぐれたようで、ようやく年相応の表情が垣間見えた気がした。
「……ほら、貴方も早く自己紹介を済ませてくれない? この調子じゃ級長同士の顔合わせだけで一日が終わってしまうわ」
この後の予定も沢山詰まってるのに先が思いやられると、エーデルガルトは呆れ顔で俺をたしなめる。
(――ああ)
その顔が……いつか俺に踊りを教えてくれた勝気で気難しい少女のソレとダブり、不覚にも胸がじんわり温かくなっていく。
(……あの時も、よくこんな顔をして俺を叱っていたんだったな)
あの頃とは何もかもが変わってしまっただろう今でも、確かに残るものがあることに酷く安堵している自分がいた。
「……分かった」
それでようやく、数年ぶりの義理の姉との再会に僅かに浮ついた心が鎮まった。
深呼吸をして、俺は改めて二人の級長に向き直る。
「俺はディミトリ=アレクサンドル=ブレーダッド。こちらこそ、この一年よろしく頼む」
昔……王都で出会った美しい亜麻色の髪の少女が帝国に戻った後、一体その身に何が起こったのか。部外者の俺には聞けないし、聞く気はない。
だが今はただ――彼女が彼女の信じる道を悔いなく進んでゆけるよう、心の中で強く祈るばかりだった。
1/3ページ