リバミファ二次小説
【蝶の弔い】
―――ハイラル城、英傑の間。
「――ミファーがまだ来ていない?」
「そ、すっごく珍しいことにね」
久々の英傑同士の会合の為にハイラル城を訪れると、姫とプルアからミファーがまだ来ていないことを知らされた。
「いつもなら、この時間には英傑の間に来ているんですが……」
「門兵の報告だと一度城には来てるらしいから、城の周辺にいるのは確かなんだよね」
きっと早く着いたからどこかで暇を潰しに行ったのだろうが、それにしても遅すぎるということだろう。
「あの子、大人しいところあるから変なヤツに絡まれてないか心配でさ」
「城下町にも危険な場所はありますし」
城下町にもごろつきが多い区画は確かにある。
姫とプルアはミファーが何かに巻き込まれている可能性を心配しているようだ。
となると次に彼女らの口から出る言葉は決まっていた。
「それで申し訳ないんだけど、ミファーを探しに行ってくれない?」
「なんで僕が……あいつにでも頼めば良いだろ」
「ゲルドでのイーガ団襲撃以降、リンクは私の側を離れることが許されていないんです」
「あんたなら、なんとかトルネード使えばぱぱっと空から探せるでしょ?」
「なんとかじゃなくてリーバルトルネード」
プルアが至極失礼なことを言うので即座に抗議する。
「そもそも、この技は人探しの為に使うような技じゃないんだけど」
「そこをなんとかお願いしたいのですが……」
「ほら、プルア様謹製のガンバリハチミツの飴あげるから!」
「…………!」
姫とプルアに詰め寄られ、僕は英傑の間の隅に追いやられる。このまま行くとプルアにバルコニーから蹴り出されて強制的に探しに行くことになりそうだ。
周囲の目のある中でそんなことされればすぐ不名誉な噂になるだろう。それはちょっと御免被りたい。
「……はぁ、分かった分かった。行けば良いんだろ行けば」
「! ありがとうございます!」
「さっすがリトの英傑様は話が分かる! あ、会合まであんまり時間ないからなるべく早くね」
「全く、調子良いんだからプルアは……。じゃ、ちょっと行ってくるよ」
そう言って、僕は英傑の間の外のバルコニーから空に飛び立った。
(さて……どこから探そうか)
リーバルトルネードで高度を上げながらまず探しに行く所に目星をつける。姫とプルアはああ言っていたが、あの大人しいが聡明なお姫様が自分から城下町の危険な場所に行くとは考えにくい。
(あのお姫様がいるなら森林公園かな)
あそこは自然も多いし静かな場所だ。
(手がかりもないし、とりあえずそこからあたってみよう)
そこまで考えて、僕は城の東にある森林公園へと進路を定めた。
◇ ◇
「なんだ、こんな所にいたのか」
「り、リーバルさん……?!」
目的のお姫様は比較的すぐに見つかった。
森林公園の川べりの近くで佇んでいたミファーの背中に声をかければ、彼女は驚いた声を上げる。その声音が少し涙声に聞こえたがどうしたのだろう。
「会合の時間、もうすぐだったね。ごめんね、わざわざ探しに来てくれて」
振り返ったミファーは泣き腫らした顔で何かを大事そうに両手に乗せていた。それがヒンヤリアゲハの死骸だと分かって若干戸惑う。
「それは……」
「えっと、これはその……話せば長くて……」
僕が視線を蝶の死骸に向けて呟くと、ミファーは悲しげに俯き目に涙を溜める。
「さっき私がここに来た時……」
しばらくの沈黙の後、ミファーはここで起きた事の顛末をゆっくりと話してくれた。
この蝶の身に起きた、よくある悲劇を。
◇ ◇
立ち話もなんだったので、近くの噴水のへりに座ってミファーの話を聞くことにした。会合の時間が刻一刻と迫っていたが、ミファーをこのままにはしておけなかった。
「――森林公園に着いた時、子ども達の騒ぐ声が聞こえたから気になってこの場所に辿り着いたの。そしたら、子ども達が私に気付くとすぐに逃げ出して……。彼らがいた中心に向かうと、ボロボロのこの子が……地面に……落ちてて……」
「………………」
「それで慌てて治癒の力を使ったんだけど、手遅れだったの。それがすごく悲しくてやるせなくて、私泣いちゃって……。子どもって結構残酷だって分かってるんだけど、この子には何の罪もなかったのにって……」
「……………………」
そこまで語り終えると、ミファーは自身の溢れた涙を静かに指で拭っていた。
かける言葉が中々見つからず、しばし噴水の流れる音だけが、周りに響いていた。
「――これだから、ハイリア人の子どもは嫌いなんだ」
「リーバル、さん……?」
しばらくして、僕は思わず殆ど言葉にしない本音を漏らした。
「あいつら、小鳥や猫、果ては犬までいじめるんだぜ? ホント、リトでは考えられないよ」
「それは、そう、だけど……でも」
「ミファー、こういう時はもっと怒って良い。そうじゃないと、この蝶も浮かばれない」
「リーバルさん……」
「ねぇミファー、この蝶……ちゃんと弔ってあげない?」
「! そっかお墓……」
「蝶を殺したそいつらを叱り飛ばしてやりたい所だけど、もう難しいしね。せめて安らかに眠らせてあげよう」
「うん……! あ、でも会合の時間が……」
「少しくらい遅れて行っても大丈夫でしょ。姫達だって事情を言えばきっと分かってくれる筈さ」
そうして僕とミファーは、まず蝶が安らかに眠れそうな場所を探すことにした。
◇ ◇
しばらく森林公園を歩いて、綺麗な花畑があったのでそこの隅に蝶を埋めることにした。
穴を掘るのに適した道具がなく、仕方なくミファーが光鱗の槍を使って穴を掘った。仮にもゾーラの姫が使う槍なのに大丈夫なのかとヒヤヒヤしたが、本人は気にしていないようだった。
そうして掘った穴に蝶をそっと置き、静かに土をかぶせる。
「――女神ハイリアよ、かの者の魂に永遠の安らぎを与え給え」
「――――――」
葬儀でよく使われる言葉を述べて、二人で小さな墓に黙祷を捧げる。小さな蝶だが、慈悲深い女神ならきっと僕らの蝶への想いに応えてくれるだろう。
しばらく黙祷していると、穏やかな風が僕の三つ編みやミファーの頭飾りを揺らす。なんとなく僕らの想いが女神に届いたように感じられた。
◇ ◇
「ありがとう、リーバルさん」
「ん? どうしたんだい改まって」
森林公園を後にして空から二人で城に向かう途中、ミファーが僕にお礼を言ってきた。ちなみにミファーには僕の背中に乗ってもらっている。本当はしたくなかったが、会合に遅刻している為仕方がなかった。
「蝶のこと、色々と一緒に考えてくれて」
「別にお礼を言われるようなことはしていないさ」
「でも、私は嬉しかったの。リーバルさん、意外と優しいんだなって」
「ふん、意外とが余計だよ」
「あっ、ごめんなさい……」
「ま、そう言われても仕方ないことくらい自覚はしてるさ」
「……もっと、そういう面を皆に見せたら?」
「御免被る。大体、僕らはそんな事の為に集められた訳じゃないでしょ」
「それは、そうだけど……。でも、お互い分かり合ってた方が戦いの時に連携も取りやすいと思うよ」
「…………」
そういった返し方をミファーが出来るとは思わず、つい返事を忘れてしまった。
「えっと、私失礼なこと言っちゃったかな……」
「いや、ミファーも意外としっかりしてるんだなって」
「むぅ、意外とが余計だよ」
「ふっ、さっきのお返しということでどうだい?」
「……ふふっ、それなら仕方ないね」
そんな会話をしながら僕らは英傑の間に辿り着き、会合に遅れて合流した。
このまま二人だけの時間が続けば良かったのにと、極めて自分らしくないことを考えていたのは僕だけの秘密である。
―――ハイラル城、英傑の間。
「――ミファーがまだ来ていない?」
「そ、すっごく珍しいことにね」
久々の英傑同士の会合の為にハイラル城を訪れると、姫とプルアからミファーがまだ来ていないことを知らされた。
「いつもなら、この時間には英傑の間に来ているんですが……」
「門兵の報告だと一度城には来てるらしいから、城の周辺にいるのは確かなんだよね」
きっと早く着いたからどこかで暇を潰しに行ったのだろうが、それにしても遅すぎるということだろう。
「あの子、大人しいところあるから変なヤツに絡まれてないか心配でさ」
「城下町にも危険な場所はありますし」
城下町にもごろつきが多い区画は確かにある。
姫とプルアはミファーが何かに巻き込まれている可能性を心配しているようだ。
となると次に彼女らの口から出る言葉は決まっていた。
「それで申し訳ないんだけど、ミファーを探しに行ってくれない?」
「なんで僕が……あいつにでも頼めば良いだろ」
「ゲルドでのイーガ団襲撃以降、リンクは私の側を離れることが許されていないんです」
「あんたなら、なんとかトルネード使えばぱぱっと空から探せるでしょ?」
「なんとかじゃなくてリーバルトルネード」
プルアが至極失礼なことを言うので即座に抗議する。
「そもそも、この技は人探しの為に使うような技じゃないんだけど」
「そこをなんとかお願いしたいのですが……」
「ほら、プルア様謹製のガンバリハチミツの飴あげるから!」
「…………!」
姫とプルアに詰め寄られ、僕は英傑の間の隅に追いやられる。このまま行くとプルアにバルコニーから蹴り出されて強制的に探しに行くことになりそうだ。
周囲の目のある中でそんなことされればすぐ不名誉な噂になるだろう。それはちょっと御免被りたい。
「……はぁ、分かった分かった。行けば良いんだろ行けば」
「! ありがとうございます!」
「さっすがリトの英傑様は話が分かる! あ、会合まであんまり時間ないからなるべく早くね」
「全く、調子良いんだからプルアは……。じゃ、ちょっと行ってくるよ」
そう言って、僕は英傑の間の外のバルコニーから空に飛び立った。
(さて……どこから探そうか)
リーバルトルネードで高度を上げながらまず探しに行く所に目星をつける。姫とプルアはああ言っていたが、あの大人しいが聡明なお姫様が自分から城下町の危険な場所に行くとは考えにくい。
(あのお姫様がいるなら森林公園かな)
あそこは自然も多いし静かな場所だ。
(手がかりもないし、とりあえずそこからあたってみよう)
そこまで考えて、僕は城の東にある森林公園へと進路を定めた。
◇ ◇
「なんだ、こんな所にいたのか」
「り、リーバルさん……?!」
目的のお姫様は比較的すぐに見つかった。
森林公園の川べりの近くで佇んでいたミファーの背中に声をかければ、彼女は驚いた声を上げる。その声音が少し涙声に聞こえたがどうしたのだろう。
「会合の時間、もうすぐだったね。ごめんね、わざわざ探しに来てくれて」
振り返ったミファーは泣き腫らした顔で何かを大事そうに両手に乗せていた。それがヒンヤリアゲハの死骸だと分かって若干戸惑う。
「それは……」
「えっと、これはその……話せば長くて……」
僕が視線を蝶の死骸に向けて呟くと、ミファーは悲しげに俯き目に涙を溜める。
「さっき私がここに来た時……」
しばらくの沈黙の後、ミファーはここで起きた事の顛末をゆっくりと話してくれた。
この蝶の身に起きた、よくある悲劇を。
◇ ◇
立ち話もなんだったので、近くの噴水のへりに座ってミファーの話を聞くことにした。会合の時間が刻一刻と迫っていたが、ミファーをこのままにはしておけなかった。
「――森林公園に着いた時、子ども達の騒ぐ声が聞こえたから気になってこの場所に辿り着いたの。そしたら、子ども達が私に気付くとすぐに逃げ出して……。彼らがいた中心に向かうと、ボロボロのこの子が……地面に……落ちてて……」
「………………」
「それで慌てて治癒の力を使ったんだけど、手遅れだったの。それがすごく悲しくてやるせなくて、私泣いちゃって……。子どもって結構残酷だって分かってるんだけど、この子には何の罪もなかったのにって……」
「……………………」
そこまで語り終えると、ミファーは自身の溢れた涙を静かに指で拭っていた。
かける言葉が中々見つからず、しばし噴水の流れる音だけが、周りに響いていた。
「――これだから、ハイリア人の子どもは嫌いなんだ」
「リーバル、さん……?」
しばらくして、僕は思わず殆ど言葉にしない本音を漏らした。
「あいつら、小鳥や猫、果ては犬までいじめるんだぜ? ホント、リトでは考えられないよ」
「それは、そう、だけど……でも」
「ミファー、こういう時はもっと怒って良い。そうじゃないと、この蝶も浮かばれない」
「リーバルさん……」
「ねぇミファー、この蝶……ちゃんと弔ってあげない?」
「! そっかお墓……」
「蝶を殺したそいつらを叱り飛ばしてやりたい所だけど、もう難しいしね。せめて安らかに眠らせてあげよう」
「うん……! あ、でも会合の時間が……」
「少しくらい遅れて行っても大丈夫でしょ。姫達だって事情を言えばきっと分かってくれる筈さ」
そうして僕とミファーは、まず蝶が安らかに眠れそうな場所を探すことにした。
◇ ◇
しばらく森林公園を歩いて、綺麗な花畑があったのでそこの隅に蝶を埋めることにした。
穴を掘るのに適した道具がなく、仕方なくミファーが光鱗の槍を使って穴を掘った。仮にもゾーラの姫が使う槍なのに大丈夫なのかとヒヤヒヤしたが、本人は気にしていないようだった。
そうして掘った穴に蝶をそっと置き、静かに土をかぶせる。
「――女神ハイリアよ、かの者の魂に永遠の安らぎを与え給え」
「――――――」
葬儀でよく使われる言葉を述べて、二人で小さな墓に黙祷を捧げる。小さな蝶だが、慈悲深い女神ならきっと僕らの蝶への想いに応えてくれるだろう。
しばらく黙祷していると、穏やかな風が僕の三つ編みやミファーの頭飾りを揺らす。なんとなく僕らの想いが女神に届いたように感じられた。
◇ ◇
「ありがとう、リーバルさん」
「ん? どうしたんだい改まって」
森林公園を後にして空から二人で城に向かう途中、ミファーが僕にお礼を言ってきた。ちなみにミファーには僕の背中に乗ってもらっている。本当はしたくなかったが、会合に遅刻している為仕方がなかった。
「蝶のこと、色々と一緒に考えてくれて」
「別にお礼を言われるようなことはしていないさ」
「でも、私は嬉しかったの。リーバルさん、意外と優しいんだなって」
「ふん、意外とが余計だよ」
「あっ、ごめんなさい……」
「ま、そう言われても仕方ないことくらい自覚はしてるさ」
「……もっと、そういう面を皆に見せたら?」
「御免被る。大体、僕らはそんな事の為に集められた訳じゃないでしょ」
「それは、そうだけど……。でも、お互い分かり合ってた方が戦いの時に連携も取りやすいと思うよ」
「…………」
そういった返し方をミファーが出来るとは思わず、つい返事を忘れてしまった。
「えっと、私失礼なこと言っちゃったかな……」
「いや、ミファーも意外としっかりしてるんだなって」
「むぅ、意外とが余計だよ」
「ふっ、さっきのお返しということでどうだい?」
「……ふふっ、それなら仕方ないね」
そんな会話をしながら僕らは英傑の間に辿り着き、会合に遅れて合流した。
このまま二人だけの時間が続けば良かったのにと、極めて自分らしくないことを考えていたのは僕だけの秘密である。
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