何かを贈るリバミファ
【つがいのマックスサーモン】
今日、城での英傑同士の会合のついでにミファーにつがいのマックスサーモンをお裾分けだと称して手渡した。
サーモンがつがいを作るのはおかしいと思われるかもしれないが、ハイラルのサーモンは他の地方に棲息するものとは違い海に出ることも遡上もせずにつがいを作って穏やかに繁殖する特殊な生態を持つ。
彼らは一度つがいを作るとずっと同じ相手と繁殖するのだが、それにあやかってリト族の間では夫婦 のサーモンを贈る行為はプロポーズの定番の一つとなっているのだ。
幸い、ミファーはそのことを知らないみたいで誤魔化す手間が省けて助かった。
そういった習慣に詳しそうな姫やウルボザなどが(ついでに言えばあの退魔の騎士も)英傑の間から退室したタイミングを見計らって渡したから、当分の間は彼らにバレることはないと思いたい。
僕らのやり取りを横で見ていたダルケルが突然『じゃあ俺もミファーにとっておきのロース岩をお裾分けするぜ!』と、ミファーに大きな大きなロース岩を渡そうとしてきた時は違う意味で大いに冷や汗をかいたが……。
――話を戻そう。
僕からサーモンをもらったミファーは突然のことに驚きながらもとても感激した様子で、あの黄水晶みたいな綺麗な目をキラキラさせて喜んでいた。
なんでも、ゾーラ族の間ではマックスサーモンは特別な時に食べられるご馳走なんだそうだ。
全くの偶然ではあったが、まさかここまで喜んでもらえるとは思わなかったので僕も純粋にうれしかった。
ミファーの喜ぶ様子はリトの子供達のように無邪気で微笑ましく、頬がだらしなく緩みそうになるのを必死に耐えたのは僕だけの秘密である。
城で別れてからそろそろ半刻ほど経つが、ミファーは今どの辺りまで帰り着いたのだろうか。
あのお姫様のことだから、今頃になって僕がなぜ二匹もサーモンをくれたのか帰り道で考え込んでいそうだ。
そうして最終的には自分が食いしん坊に見られたんじゃないかとか、そんな可愛らしい勘違いをしているに違いない。
――それがいいし、それでいい。
気持ちに嘘はつきたくはないけど、ソレを押し付ける気は毛頭ない。
あのお姫様がドギマギしながらあいつを見つめているのを、少し離れた所から眺めてるくらいが今の僕には丁度良いから。
求婚の意味はナイショで押し付けた
色赤々とつがいのサーモン
◇ ◇ ◇ ◇
今日、リーバルさんから唐突に二匹のマックスサーモンをもらった。
捕ってすぐ適切な処置を施されてヘブラの雪で瞬間冷凍されただろうニ匹はどちらも新鮮そのものだった。
今の時期は繁殖期直前らしく、その身には脂がのっており雌は魚卵を抱えているのもあってとても美味しいのだと教えてもらった。
ゾーラの里はヘブラ地方と真反対の場所にあるから、この大きくて真っ赤なお魚は中々食べる機会がこない。
そういった事情もあって、私達ゾーラ族の間ではマックスサーモンは特別な時にしか食べられないご馳走という認識が強いのだ。
――そうだ、里に戻ったらシドや御父様と一緒にこの魚を食べよう。
シドはマックスサーモンに目がないので、きっと大喜びしてあのとびきり可愛い笑顔を見せてくれるに違いない。
御父様だって彼らの魚卵が好きだし、量は僅かでも予期せぬご馳走にどっしりした体を大げさに揺らして喜んでくれるはずだ。
二人が喜ぶ様子を想像するだけで、里に帰る足どりも自然と軽やかになっていく。
それにしても、リーバルさんはどうしてこんな立派なサーモンを二匹も私にくれたんだろう。
一匹だけは足りないと思われたのかしら。
食いしん坊だと思われた、とか……?
………………。
どうしよう、今更だけどすごく恥ずかしくなってきちゃった。
からかってる素振りはなかったと思うのだけど、一体どういうつもりだったんだろう。
あの人の考えてるコトは、私にはやっぱりよく分からない。
三人で食べたサーモンなぜだろう
どこか優しく甘塩っぱくて
今日、城での英傑同士の会合のついでにミファーにつがいのマックスサーモンをお裾分けだと称して手渡した。
サーモンがつがいを作るのはおかしいと思われるかもしれないが、ハイラルのサーモンは他の地方に棲息するものとは違い海に出ることも遡上もせずにつがいを作って穏やかに繁殖する特殊な生態を持つ。
彼らは一度つがいを作るとずっと同じ相手と繁殖するのだが、それにあやかってリト族の間では
幸い、ミファーはそのことを知らないみたいで誤魔化す手間が省けて助かった。
そういった習慣に詳しそうな姫やウルボザなどが(ついでに言えばあの退魔の騎士も)英傑の間から退室したタイミングを見計らって渡したから、当分の間は彼らにバレることはないと思いたい。
僕らのやり取りを横で見ていたダルケルが突然『じゃあ俺もミファーにとっておきのロース岩をお裾分けするぜ!』と、ミファーに大きな大きなロース岩を渡そうとしてきた時は違う意味で大いに冷や汗をかいたが……。
――話を戻そう。
僕からサーモンをもらったミファーは突然のことに驚きながらもとても感激した様子で、あの黄水晶みたいな綺麗な目をキラキラさせて喜んでいた。
なんでも、ゾーラ族の間ではマックスサーモンは特別な時に食べられるご馳走なんだそうだ。
全くの偶然ではあったが、まさかここまで喜んでもらえるとは思わなかったので僕も純粋にうれしかった。
ミファーの喜ぶ様子はリトの子供達のように無邪気で微笑ましく、頬がだらしなく緩みそうになるのを必死に耐えたのは僕だけの秘密である。
城で別れてからそろそろ半刻ほど経つが、ミファーは今どの辺りまで帰り着いたのだろうか。
あのお姫様のことだから、今頃になって僕がなぜ二匹もサーモンをくれたのか帰り道で考え込んでいそうだ。
そうして最終的には自分が食いしん坊に見られたんじゃないかとか、そんな可愛らしい勘違いをしているに違いない。
――それがいいし、それでいい。
気持ちに嘘はつきたくはないけど、ソレを押し付ける気は毛頭ない。
あのお姫様がドギマギしながらあいつを見つめているのを、少し離れた所から眺めてるくらいが今の僕には丁度良いから。
求婚の意味はナイショで押し付けた
色赤々とつがいのサーモン
◇ ◇ ◇ ◇
今日、リーバルさんから唐突に二匹のマックスサーモンをもらった。
捕ってすぐ適切な処置を施されてヘブラの雪で瞬間冷凍されただろうニ匹はどちらも新鮮そのものだった。
今の時期は繁殖期直前らしく、その身には脂がのっており雌は魚卵を抱えているのもあってとても美味しいのだと教えてもらった。
ゾーラの里はヘブラ地方と真反対の場所にあるから、この大きくて真っ赤なお魚は中々食べる機会がこない。
そういった事情もあって、私達ゾーラ族の間ではマックスサーモンは特別な時にしか食べられないご馳走という認識が強いのだ。
――そうだ、里に戻ったらシドや御父様と一緒にこの魚を食べよう。
シドはマックスサーモンに目がないので、きっと大喜びしてあのとびきり可愛い笑顔を見せてくれるに違いない。
御父様だって彼らの魚卵が好きだし、量は僅かでも予期せぬご馳走にどっしりした体を大げさに揺らして喜んでくれるはずだ。
二人が喜ぶ様子を想像するだけで、里に帰る足どりも自然と軽やかになっていく。
それにしても、リーバルさんはどうしてこんな立派なサーモンを二匹も私にくれたんだろう。
一匹だけは足りないと思われたのかしら。
食いしん坊だと思われた、とか……?
………………。
どうしよう、今更だけどすごく恥ずかしくなってきちゃった。
からかってる素振りはなかったと思うのだけど、一体どういうつもりだったんだろう。
あの人の考えてるコトは、私にはやっぱりよく分からない。
三人で食べたサーモンなぜだろう
どこか優しく甘塩っぱくて