からかうリバミファ

【笑い方がくしゃみみたいって話】


 ミファーの少しムッとした顔はなんだか微笑ましくて、ついからかってその表情を引き出しては吹き出してを繰り返すのは英傑になってついた僕の悪い癖だ。

 初めは僕のからかいに頬を膨らまして怒っていたミファーも次第に慣れ、今ではため息をつくに留まることも増えた。

 それはそれで寂しいものだったが、代わりに見せる僅かに憂いを帯びる表情にもまた違う興味をそそられ、お姫様をからかうのを止めるのは当分出来そうになかった。

「――貴方って、くしゃみをするように笑うのね」

 会合が終わった後の夕暮れの英傑の間で、性懲りも無くからかって笑う僕にミファーは頬杖をついてそう呟いた。

「くしゃみ?」
「そう、くしゃみ。本当にくしゅんって聴こえるんだよ」

 ――なるほど、くしゃみときたか。
 ゾーラの里からあまり出たことがないからか、彼女の感性は中々に独特だ。

(でも……)

 言われてみれば、くしゃみをするのも吹き出して笑うのも動作としては似てる気がしなくもない。

「まぁ、似てなくもないかな」
「でしょう?」

 無邪気に笑うゾーラのお姫様の頭飾りがシャラリと鳴り、日没間際の黄金を弾いて上品に揺れる。

 夕日に照らされた彼女の頬や体は磁器のようにつるりとなめらかで、特に肌が白い所は白磁のように透き通っていた。

 まるでおとぎ話の人魚姫が本から抜け出してきたように、神秘的で優美だった。

 ――もしここで『僕の笑い方がくしゃみなら、君の微笑は人魚の吐息のようだね』なんて言ったら、ミファーはどう思うのだろうか。

「………………」

 なんとなく気恥ずかしくなって開きかけた口を噤む。
 そんな僕をミファーは頬杖をついたまま不思議そうに見つめていた。


貴方ってくしゃみするように笑うのね
赤い人魚は頬杖ついて

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