居眠りするリバミファ
【微睡むお姫様と柔らかなクッション】
―――ハイラル城、ミファーの部屋
ある晴れた日の穏やかな昼下がり。
お城に用意された私の部屋で微睡んでいたら、何か柔らかいものが頬に触れた気がした。
いつかウルボザさんからもらったスナザラシのぬいぐるみよりも心地よいその感触を逃したくなくて、目をつぶったまま柔らかい何かを闇雲に掴む。
(――すごく、あったかい……)
掴んだ柔らかいクッションのようなものはものすごくフワフワでとても温かかった。
思わず胸元に引き寄せて、その柔らかさを堪能する。
リト族の羽毛のようなソレは仄かにヒンヤリハーブの匂いがした。
顔をそっと埋めて息を吸い込むとあのハーブの爽やかな香りが胸いっぱいに広がってとても心地良い。
(……? なんだろう……?)
その時何か……捕まえたクッションがビクリと震えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
改めてクッションの柔らかさに意識を集中させる。
(――リーバルさんがいつも自慢してるリト羽毛って、こんな感触なのかな)
彼らの羽毛で出来たクッションがこんなに温かくて柔らかいのであればゾーラの里でも王族用にいくつか仕入れてもらえないかなぁと、微睡んだままの頭でぼんやりと考える。
「…ぁ、ふ……」
柔らかく良い香りのするクッションのお陰か、急に眠気が強くなって思わず欠伸がこぼれる。
今日は英傑同士の集まりがある日だけど、始まるのは夜だ。
(もう少しだけ、お昼寝していても大丈夫……だよ、ね……)
フワフワのクッションを先程よりしっかり抱きしめれば、私の意識はあっという間に夢の世界へと旅立っていた。
◇ ◇
「参ったな、コレ……」
僕の手を枕代わりに顔を埋めて熟睡してしまったミファーを横目に見ながら、一人呟く。
このお姫様から借りた本を返しに来ただけだったのに、どうしてこうなった。
ドアが開いていたから起きてるものだと思って一応ノックしてから部屋に入ったら……。
「――全く、無防備が過ぎる」
長椅子で微睡むミファーの柔らかそうな頬を思わずつついてしまったのが運のツキだった。
指一本ならまだしもまさか片手全部がっちりホールドして掴んでいくとは。
「ミファーって意外と力強いんだね」
無理やり引き離しても良かったのだが、幸せそうに小さく寝息を立てるお姫様の眠りを邪魔する気には到底なれなかった。
「……起きるまで待つしかないか」
今日は英傑同士の会合があるが、開かれるのは夜だ。
まだ時間にも余裕がある。
眠れるお姫様を起こさないようにそっと近くの床に座り、長椅子を背もたれ代わりにする。
「これ、もしウルボザに見つかったら焼きトリにされちゃうのかな……僕」
その様が容易に想像出来て思わず身震いする。
ヴァーイが寝ている部屋に忍び込んだと思われたら確実にアウトだ。
出来ればその前にミファーに起きてもらわないと困るのだが……。
最悪、すぐに窓から逃げられるように部屋の出入口はしっかり見張っておこう。
「くわばらくわばら……」
思わずリトの古い雷除けのおまじないを唱える。
あの英傑がミファーの部屋に入って来ない事を祈りながら、僕はお姫様の目覚めをひたすら待つ他なかった。
開いていた窓から晴れた昼下がりの優しい風が入り込む。
その風は眠れるゾーラの王女の頬やリトの戦士の髪飾りを撫でるように、部屋を爽やかに吹き抜けていった。
―――ハイラル城、ミファーの部屋
ある晴れた日の穏やかな昼下がり。
お城に用意された私の部屋で微睡んでいたら、何か柔らかいものが頬に触れた気がした。
いつかウルボザさんからもらったスナザラシのぬいぐるみよりも心地よいその感触を逃したくなくて、目をつぶったまま柔らかい何かを闇雲に掴む。
(――すごく、あったかい……)
掴んだ柔らかいクッションのようなものはものすごくフワフワでとても温かかった。
思わず胸元に引き寄せて、その柔らかさを堪能する。
リト族の羽毛のようなソレは仄かにヒンヤリハーブの匂いがした。
顔をそっと埋めて息を吸い込むとあのハーブの爽やかな香りが胸いっぱいに広がってとても心地良い。
(……? なんだろう……?)
その時何か……捕まえたクッションがビクリと震えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
改めてクッションの柔らかさに意識を集中させる。
(――リーバルさんがいつも自慢してるリト羽毛って、こんな感触なのかな)
彼らの羽毛で出来たクッションがこんなに温かくて柔らかいのであればゾーラの里でも王族用にいくつか仕入れてもらえないかなぁと、微睡んだままの頭でぼんやりと考える。
「…ぁ、ふ……」
柔らかく良い香りのするクッションのお陰か、急に眠気が強くなって思わず欠伸がこぼれる。
今日は英傑同士の集まりがある日だけど、始まるのは夜だ。
(もう少しだけ、お昼寝していても大丈夫……だよ、ね……)
フワフワのクッションを先程よりしっかり抱きしめれば、私の意識はあっという間に夢の世界へと旅立っていた。
◇ ◇
「参ったな、コレ……」
僕の手を枕代わりに顔を埋めて熟睡してしまったミファーを横目に見ながら、一人呟く。
このお姫様から借りた本を返しに来ただけだったのに、どうしてこうなった。
ドアが開いていたから起きてるものだと思って一応ノックしてから部屋に入ったら……。
「――全く、無防備が過ぎる」
長椅子で微睡むミファーの柔らかそうな頬を思わずつついてしまったのが運のツキだった。
指一本ならまだしもまさか片手全部がっちりホールドして掴んでいくとは。
「ミファーって意外と力強いんだね」
無理やり引き離しても良かったのだが、幸せそうに小さく寝息を立てるお姫様の眠りを邪魔する気には到底なれなかった。
「……起きるまで待つしかないか」
今日は英傑同士の会合があるが、開かれるのは夜だ。
まだ時間にも余裕がある。
眠れるお姫様を起こさないようにそっと近くの床に座り、長椅子を背もたれ代わりにする。
「これ、もしウルボザに見つかったら焼きトリにされちゃうのかな……僕」
その様が容易に想像出来て思わず身震いする。
ヴァーイが寝ている部屋に忍び込んだと思われたら確実にアウトだ。
出来ればその前にミファーに起きてもらわないと困るのだが……。
最悪、すぐに窓から逃げられるように部屋の出入口はしっかり見張っておこう。
「くわばらくわばら……」
思わずリトの古い雷除けのおまじないを唱える。
あの英傑がミファーの部屋に入って来ない事を祈りながら、僕はお姫様の目覚めをひたすら待つ他なかった。
開いていた窓から晴れた昼下がりの優しい風が入り込む。
その風は眠れるゾーラの王女の頬やリトの戦士の髪飾りを撫でるように、部屋を爽やかに吹き抜けていった。