ゼノブレ二次小説
【せめて幻の中では】
「アデル……?」
レックス達とお父様の所へ向かっていた筈の私の前に、なぜだかアデルが立っていた。
彼は何も言わず、五百年前と変わらない少しだけ困ったような笑みを浮かべていた。
(これは……)
周りには誰もいない。ホムラすらいない。
二人が今いるのはイーラの市街地だが、全体的にくすんでいて空間としてもどこそこが歪んでいる。アデルも込みで幻であることが分かった。
(レックスは……?)
レックスとの繋がりもちゃんと近くに感じられる。他の皆も近くにいることが確信できた。
(きっと、これはお父様の試練なんだわ)
その人が持つ他者への不安を具現化する試練。きっと他の皆もお父様の幻に試されているのだろう。レックスの感情がひどく不安定に揺れているのが手に取るように分かった。
(レックスを助けなきゃ)
その為にも目の前の幻をどうにかしなければならなかった。
デバイスの力は……使えない。
自分で排除しなければならないようだ。
「なんか、言いなさいよ」
こちらが剣を構えても、アデルは困ったような笑みを張り付かせていた。
なるほどこの幻はよく出来ている。
私はこの笑みが一番好きで、同時に一番怖かった。良いことでも悪いことでも何か言われたら言い返せるが、何も言われなければこちらは何もできないからだ。
思えばそこからすれ違いがあったのかもしれない。そのすれ違いが最終的にイーラに悲劇をもたらしたとも言えるのかもしれない。
(――でも)
すれ違っていたのは事実だったが、それでも……私とアデルはあの時確かに一組のブレイドとドライバーとして戦った。結果的に悲劇を残したけれど、それを含めて彼との大切な思い出だ。
「もう、私は迷わない」
後悔はしたりないほどしてきた。だから今はアデルの繋いだ世界を護る為にも前に進もう。
「はぁっ!」
アデルを剣で一閃すると、彼の幻は困ったような笑みを浮かべたまま消え始める。
「貴方のこと、ずっと好きだった」
消えていく彼とイーラの市街地を見つめながら真っ直ぐにそう言い切った。
気付いた時には終わっていた初恋だった。心の殻に引きこもって、さよならも言えないままの別れだった。彼との思い出は今なお後悔にまみれている。
……それでも。
「貴方がいてくれたから、私は前に進める」
幻のアデルが消える。消える一瞬だけ、彼の顔がにっこりと微笑んでいるように見えて泣きそうになったが耐えてみせた。
「ありがとう、さようなら」
幻達はまるでサフロージュの花吹雪のように舞い散っていく。迷いを断ち切った私を祝福するように。
「アデル……?」
レックス達とお父様の所へ向かっていた筈の私の前に、なぜだかアデルが立っていた。
彼は何も言わず、五百年前と変わらない少しだけ困ったような笑みを浮かべていた。
(これは……)
周りには誰もいない。ホムラすらいない。
二人が今いるのはイーラの市街地だが、全体的にくすんでいて空間としてもどこそこが歪んでいる。アデルも込みで幻であることが分かった。
(レックスは……?)
レックスとの繋がりもちゃんと近くに感じられる。他の皆も近くにいることが確信できた。
(きっと、これはお父様の試練なんだわ)
その人が持つ他者への不安を具現化する試練。きっと他の皆もお父様の幻に試されているのだろう。レックスの感情がひどく不安定に揺れているのが手に取るように分かった。
(レックスを助けなきゃ)
その為にも目の前の幻をどうにかしなければならなかった。
デバイスの力は……使えない。
自分で排除しなければならないようだ。
「なんか、言いなさいよ」
こちらが剣を構えても、アデルは困ったような笑みを張り付かせていた。
なるほどこの幻はよく出来ている。
私はこの笑みが一番好きで、同時に一番怖かった。良いことでも悪いことでも何か言われたら言い返せるが、何も言われなければこちらは何もできないからだ。
思えばそこからすれ違いがあったのかもしれない。そのすれ違いが最終的にイーラに悲劇をもたらしたとも言えるのかもしれない。
(――でも)
すれ違っていたのは事実だったが、それでも……私とアデルはあの時確かに一組のブレイドとドライバーとして戦った。結果的に悲劇を残したけれど、それを含めて彼との大切な思い出だ。
「もう、私は迷わない」
後悔はしたりないほどしてきた。だから今はアデルの繋いだ世界を護る為にも前に進もう。
「はぁっ!」
アデルを剣で一閃すると、彼の幻は困ったような笑みを浮かべたまま消え始める。
「貴方のこと、ずっと好きだった」
消えていく彼とイーラの市街地を見つめながら真っ直ぐにそう言い切った。
気付いた時には終わっていた初恋だった。心の殻に引きこもって、さよならも言えないままの別れだった。彼との思い出は今なお後悔にまみれている。
……それでも。
「貴方がいてくれたから、私は前に進める」
幻のアデルが消える。消える一瞬だけ、彼の顔がにっこりと微笑んでいるように見えて泣きそうになったが耐えてみせた。
「ありがとう、さようなら」
幻達はまるでサフロージュの花吹雪のように舞い散っていく。迷いを断ち切った私を祝福するように。