ゼノブレ二次小説
【紅茶とニアとホムラ】
イヤサキ村のコルレルさんの家で一泊したある日の夜、中々眠れなくて私はそっと家を抜け出した。
「お、ホムラじゃん。どうしたの?」
家から出てテラスに向かうと、ニアが外にあった椅子に腰掛けてアイスティーを飲んでいた。テーブルには紅茶が入っているだろうポットが置いてあり、ニアが自分で淹れたものだと推測できた。
「少し、眠れなくて」
「奇遇だね。アタシも眠れなくてここで紅茶飲んでたんだ」
「これ、ニアが淹れたんですか?」
「そだよー。あ、ホムラにもあげるよ。ちょっと待ってて」
「えっ、ちょっとニア……」
私が呼び止める暇もなく、ニアは家の方に引っ込んでしまった。きっとグラスを用意しに行ったのだろう。だが今はそれより何より考えなければならないことがあった。
「大丈夫……かな」
ニアは壊滅的に料理ができない。それこそ、ヒカリちゃんと同等のレベルで。そんなニアが淹れた紅茶である。本人には失礼だと重々理解した上で、飲んで大丈夫なのかという大きな不安が頭によぎった。
「ほらほら、そこの椅子に座って座って!」
「……えっと」
「アイスティーにしてあげるから、もちょっと待ってね」
氷の入ったグラスにニアは手早くポットから紅茶を注ぐ。グラスの中で氷が踊りながら紅茶の熱に溶けていった。
「ニア、その……」
「はい! ちょっと濃いかもしれないけど、飲めると思うよ」
お構いなくと言う暇もなく、アイスティーが自分の眼前に差し出された。明らかに速い。紅茶を淹れるのに慣れてないと難しい速さだった。
「えっと、ありがとうございます」
断るタイミングがなくなり、ニアから差し出されたアイスティーを仕方なくもらう。
「…………」
幸い明らかにおかしな匂いはしないし、色もよく煮出された紅茶そのものだ。それでもやはり怖いものは怖いもので、私は密かに息を飲んでからアイスティーに口をつけた。
「! 美味しい……」
驚きが美味しいものに出会った幸福感に変わるまで数秒と掛からなかった。自分で淹れるのと同じくらい、ニアの淹れた紅茶は美味しかった。
「ニアって紅茶淹れるの上手かったんですね」
「そう? へへっ、少しは自信あったけど、まさかホムラに褒められるなんて思わなかったよ」
褒められて嬉しかったのか、ニアは上機嫌でアイスティーをごくごくと飲む。
「紅茶の淹れ方、誰かに教えてもらったんですか?」
「姉さんが淹れてるとこ見てたら自然と覚えちゃってさ」
料理だけはどうにもなんないんだけどさーと、ニアは軽く苦笑いを浮かべる。
「そうだったんですね」
「水を操るのは得意分野だし、淹れるタイミングはばっちりだよ」
えっへんと胸を張るニアはとても可愛らしかった。
「そうだ、いつかレックスにも淹れてあげましょうよ」
「レックス? だめだめ、アイツに紅茶の良し悪しなんて分かんないよ」
レックスの名前を出すが、ニアは喜ぶどころか嫌そうな顔をする。
「……確かに、そうかもしれないですが」
「あははっ、ホムラもちゃんと分かってるじゃん」
「でも、レックスならとても喜んでくれそうだったから」
「いいのいいの。アタシは自分や、アタシが淹れたいって思った人にしか淹れないから」
ヒラヒラと手を動かして、ニアはなんでもないことのように言う。好意を向けてる人に自分の得意なことを知ってもらうのは嬉しいことだと認識していた私には理解できない心境だった。
「そうだ、これからはホムラにだけは特別にアタシの紅茶を淹れてあげる」
「私だけに?」
「そ、どうせ淹れるならちゃんと良さを分かってくれる人が良いじゃん」
「でも、私で良いんですか? 私の他にも紅茶の良し悪しが分かる人っていますし」
メレフやカグツチなら、きっと分かってくれるだろう。だがニアは頑なに首を横に振る。
「ホムラが良いの。アタシ、ホムラが紅茶飲むの見るの好きなんだ。とっても幸せそうな顔して飲んでるし」
「えぇっ、そんなにですか?」
「そりゃもう、レックスと一緒にいる時と同じくらい幸せそうだよ」
「そう言われると、ちょっと恥ずかしいですね」
「ふふっ、ホムラってそういうとこ可愛いよね〜」
「もう、からかわないでください」
「はいはい。で、どうする? ホムラが嫌ならしないけど」
「ぜひお願いします。ニアの淹れた紅茶は優しい味がするので」
「へへっ、二人だけの秘密だからね」
「ええ」
アイスティーの残りを飲み干しながら空を見上げれば、綺麗な星達がキラキラと瞬いていた。眠れない夜も悪くない……そう思えるような一時だった。
イヤサキ村のコルレルさんの家で一泊したある日の夜、中々眠れなくて私はそっと家を抜け出した。
「お、ホムラじゃん。どうしたの?」
家から出てテラスに向かうと、ニアが外にあった椅子に腰掛けてアイスティーを飲んでいた。テーブルには紅茶が入っているだろうポットが置いてあり、ニアが自分で淹れたものだと推測できた。
「少し、眠れなくて」
「奇遇だね。アタシも眠れなくてここで紅茶飲んでたんだ」
「これ、ニアが淹れたんですか?」
「そだよー。あ、ホムラにもあげるよ。ちょっと待ってて」
「えっ、ちょっとニア……」
私が呼び止める暇もなく、ニアは家の方に引っ込んでしまった。きっとグラスを用意しに行ったのだろう。だが今はそれより何より考えなければならないことがあった。
「大丈夫……かな」
ニアは壊滅的に料理ができない。それこそ、ヒカリちゃんと同等のレベルで。そんなニアが淹れた紅茶である。本人には失礼だと重々理解した上で、飲んで大丈夫なのかという大きな不安が頭によぎった。
「ほらほら、そこの椅子に座って座って!」
「……えっと」
「アイスティーにしてあげるから、もちょっと待ってね」
氷の入ったグラスにニアは手早くポットから紅茶を注ぐ。グラスの中で氷が踊りながら紅茶の熱に溶けていった。
「ニア、その……」
「はい! ちょっと濃いかもしれないけど、飲めると思うよ」
お構いなくと言う暇もなく、アイスティーが自分の眼前に差し出された。明らかに速い。紅茶を淹れるのに慣れてないと難しい速さだった。
「えっと、ありがとうございます」
断るタイミングがなくなり、ニアから差し出されたアイスティーを仕方なくもらう。
「…………」
幸い明らかにおかしな匂いはしないし、色もよく煮出された紅茶そのものだ。それでもやはり怖いものは怖いもので、私は密かに息を飲んでからアイスティーに口をつけた。
「! 美味しい……」
驚きが美味しいものに出会った幸福感に変わるまで数秒と掛からなかった。自分で淹れるのと同じくらい、ニアの淹れた紅茶は美味しかった。
「ニアって紅茶淹れるの上手かったんですね」
「そう? へへっ、少しは自信あったけど、まさかホムラに褒められるなんて思わなかったよ」
褒められて嬉しかったのか、ニアは上機嫌でアイスティーをごくごくと飲む。
「紅茶の淹れ方、誰かに教えてもらったんですか?」
「姉さんが淹れてるとこ見てたら自然と覚えちゃってさ」
料理だけはどうにもなんないんだけどさーと、ニアは軽く苦笑いを浮かべる。
「そうだったんですね」
「水を操るのは得意分野だし、淹れるタイミングはばっちりだよ」
えっへんと胸を張るニアはとても可愛らしかった。
「そうだ、いつかレックスにも淹れてあげましょうよ」
「レックス? だめだめ、アイツに紅茶の良し悪しなんて分かんないよ」
レックスの名前を出すが、ニアは喜ぶどころか嫌そうな顔をする。
「……確かに、そうかもしれないですが」
「あははっ、ホムラもちゃんと分かってるじゃん」
「でも、レックスならとても喜んでくれそうだったから」
「いいのいいの。アタシは自分や、アタシが淹れたいって思った人にしか淹れないから」
ヒラヒラと手を動かして、ニアはなんでもないことのように言う。好意を向けてる人に自分の得意なことを知ってもらうのは嬉しいことだと認識していた私には理解できない心境だった。
「そうだ、これからはホムラにだけは特別にアタシの紅茶を淹れてあげる」
「私だけに?」
「そ、どうせ淹れるならちゃんと良さを分かってくれる人が良いじゃん」
「でも、私で良いんですか? 私の他にも紅茶の良し悪しが分かる人っていますし」
メレフやカグツチなら、きっと分かってくれるだろう。だがニアは頑なに首を横に振る。
「ホムラが良いの。アタシ、ホムラが紅茶飲むの見るの好きなんだ。とっても幸せそうな顔して飲んでるし」
「えぇっ、そんなにですか?」
「そりゃもう、レックスと一緒にいる時と同じくらい幸せそうだよ」
「そう言われると、ちょっと恥ずかしいですね」
「ふふっ、ホムラってそういうとこ可愛いよね〜」
「もう、からかわないでください」
「はいはい。で、どうする? ホムラが嫌ならしないけど」
「ぜひお願いします。ニアの淹れた紅茶は優しい味がするので」
「へへっ、二人だけの秘密だからね」
「ええ」
アイスティーの残りを飲み干しながら空を見上げれば、綺麗な星達がキラキラと瞬いていた。眠れない夜も悪くない……そう思えるような一時だった。