ゼノブレ二次小説

【思考するトゥルトー】


(――――?)

 ――ふと意識が浮上する。

 目の前には見慣れた砂浜と水平線が広がっている。左側には崖が張り出していて、いつものように打ち寄せる波が岸壁に弾けては小さなしぶきをあげていた。
 いつも見ている風景に私はなぜだかホッと胸部を撫で下ろした。


 ――私は極旨のトゥルトー。


 自分で付けた名前ではない。
 気が付いたら"そうである"と不可思議な認識が私の頭に張り付いていた。

 空を見上げる。
 相変わらず青く果てないそこは夜ではあるがよく晴れていた。
 大小様々な丸く青白い光が潮まみれの殻に沁みる。

 ――だが何かおかしい。

 意識が戻る直前、ここら辺は確かに日没すぐで雷雨だった筈だ。

 警戒するように周りをキョロキョロと見回す。
 実は少し前見慣れないひょろひょろの生物達が私に襲いかかってきて、ハサミを斬り飛ばされ硬い甲羅を叩き割られたのだ。
 理不尽で圧倒的な暴力にもはやこれまでと意識を手放し、死を受け入れた。

 ――その筈だった。

 だが私の意識は再び浮上し、気がつけばいつもの砂浜にいつものように佇んでいた。

 ――生きていれば、不思議な事もあるのだろう。

 思えばこんな風に自分が死ぬ類の白昼夢を見るのも珍しいことでは無かった筈だ。
 今回に限ってだけ殊更気にする必要もないのに……。

(――――)

 何か怖くなってもぞもぞと砂を食む。
 白昼夢の中で断ち切られた筈のハサミで砂を口元に運び、咀嚼する。
 だが変な妄想にとらわれて、大半を吐き出してしまった。

 トゥルトーは息を吐くような動作をして食事を止めた。

 トゥルトーは更に思考する。
 日常の風景が、何か作り物めいて感じる。
 果てない筈の海も空も実は境界があって、その先には何も無い真っ暗な行き止まりが広がってるような……そんな恐ろしい想像をしてしまう。

(――――!)

 言い知れない恐怖に、思わず威嚇音を出してハサミを振り上げる。
 海岸線を睨みつけ『私は確かに此処にいるぞ』と砂浜を細い脚達で踏み叩き、体をいからせた。

 そうして威嚇のポーズをとって数十秒後、私はようやく理解不能の恐怖から解放された。
 ……馬鹿馬鹿しくなってきたとも言う。

 さっきの白昼夢も所詮夢なのだ。
 私は私の姿のまま、此処にいる。
 ならばそれが現実なのだ。

 ――何を、怖がる必要がある。

 気を取り直して再び砂を食もうとハサミを動かそうとした。

(――――?)

 砂を口元に運ぼうとした右のハサミが、バンと音を立てて後方に吹っ飛んでいった。
 これでは、食事が……出来、ない。

(…………!)

 茫然自失としていたら左のハサミも無くなっていた。衝撃に体が大きく仰け反る。

(――?! ――!)

 痛みと衝撃で混乱状態のまま前を見上げた。

 そこには、見慣れないいつか見たひょろひょろの――生物ブレイド達が……。
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