ゼノブレ二次小説

 強敵としのぎを削り、見事勝利した後に見上げるミラの星空は格別だ。
 いくつもの衛星が青白い光を帯びて宵闇に浮かび上がり、数多の星々はその輝きに負けぬように強く瞬いてこの異質な惑星の夜空を厳かに彩るのだ。


【神鳥の寝所にて】



「はぁ〜、久々のテレシア討伐……疲れたなぁ」

 夜光の森の最奥……神鳥寝所にて、緑髪の女性ブレイドがドールの中で疲労の色の濃いため息をついていた。


「硬いし、すぐ眠らせてくるし……。やっぱり、あのオーバード一人で倒すのきつくない?」

 彼女の愛機である紫の重量級ドールマステマが静止している中空の遥か下には、終焉のテレシアが倒れ伏している。

 黄金に輝いていた羽根や尻尾はボロボロで見る影もない。
 暫くして傷だらけの巨体は翠玉の光を放ちながらミラの大地に溶けるように消えていった。


「凄腕のブレイド隊員はドールなしで倒しちゃうらしいけど……。私にはまだ無理そうだなぁ」

 彼女の乗るドールもまたボロボロだった。
 度重なるエーテル属性のマルチレーザーにさらされた機体はどこそこから小さな煙をあげ、巨大な尻尾の斬撃を浴びた脚部は大きくへこんでいた。


「ドール保険ももう随分前に切れてたし、この子が壊されなくて本当に良かったわ」

 あれだけの激しい攻撃を受けても腕や武器が吹っ飛ばなかったのは、重量級ドールの頑強さ故だろう。


「ちょっと危なかったけど、なんとか勝てたし……。うん、良しとしよう」

 任務だったのかただの暇つぶしだったのか定かではないが、そのブレイドの表情は何かをやりきった達成感を感じさせるものだった。


 ◇ ◇ ◇


「――それにしても……ここは」

 ややあって、緑髪のブレイドは周囲を見回す。
 この辺りの夜空は他の地域と違って、紅を垂らしこんだようにほんのり赤い。
 その色は寝所に咲く秘奥の巨大花やアンタレス・ルキオラの紅玉の輝きとも違っていた。


「いつ来ても、すごく…綺麗」

 怪しげな紅空に浮かぶ衛星もどこか妖艶な光をたたえ、中空に佇むドールと彼女の短めの緑髪を照らしていた。


「ワインでも持ってくれば良かったかな」

 あとはチーズとダイナーのローストビーフサンドもあればきっと最高だ。


「"ニホン"だとこういうの、"ツキミ"って呼んでたんだっけ」

 いつか"ニホン"出身であるナギ軍務長官に聞かされた話を緑髪のブレイドは思い出す。
 その時はあまりピンとこなくて流していたが、なるほど実際綺麗なものを目にすると酒とつまみが欲しくなるのも分かる気がした。


「今度ナギさん達を誘って、ここで"ツキミ"するのもいいかも」

 ここには丁度いい感じの高台もある事だし…と、緑髪の彼女はどこか悪戯っぽく微笑む。
 皆で集まって、あの大きな衛星達を愛でながらお酒を飲むというのも楽しいかもしれない。
 きっとその時には今日倒したテレシアも復活してるだろうから、空を翔ける優雅な姿も一緒に眺めることが出来るだろう。


「ま、今日は大物倒して疲れちゃったし、さっさとNLAに帰って休もうっと」

 今後の楽しみが増えた事を心から喜びながら、緑髪のブレイドはドールの操縦レバーを握る。


「オ〜バザレィンボ〜♪ グロ〜リアサ〜イ♪」

 彼女は最近お気に入りの歌を歌いながらアクセルボタンを強く押し込むと、紫のドールは原初の荒野の方向に高速でカッ飛んで行った。
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